2010 Fiscal Year Annual Research Report
低頻度の遺伝子多型に着目した血中脂質量多様性の人類遺伝学的研究
Project/Area Number |
21687021
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
中山 一大 自治医科大学, 医学部, 助教 (90433581)
|
Keywords | 人類学 / 遺伝学 / 脂質 / 進化 / ゲノム |
Research Abstract |
中性脂肪とコレステロールは動脈硬化症の危険因子としての負の側面が強調されているが、本来はヒトの生理活動に必要不可欠な分子であり、人類の適応放散において重要な役割を果たしていたものと考えられる。本研究では、アジア・太平洋地域の人類集団における脂質特性と遺伝子多型の関連性について、近年にその生物学的・臨床的意義に注目が集まっているrare variantに特に着目した解析を展開している。 平成22年度は、各種アポリポタンパク質遺伝子、クラスBスカベンジャー受容体ファミリー、アンギオポイエチン様因子ファミリーなど血清脂質量との関連が指摘されている遺伝子群について、日本人・モンゴル人・中国人・パラオ人というそれぞれ異なる遺伝的背景および生活習慣を有する人類集団を対象に変改配列の解析を行い、多くの多型・変異を同定した。特に、クラス2スカベンジャー受容体ファミリーに属するCD36およびSCARB1遺伝子については、各集団95~190人を対象とした再塩基配列決定が終了しており、合計26サイトの多型部位を同定した。そのうち15サイトについては新規に同定されたもので、各集団におけるマイナーアレル頻度が5%以下のレアバリアントであった。興味深いことに、両遺伝子ともタイ人集団において多型サイトの出現率が最も高く、非同義多型およびフレームシフトにつながる欠失多型のサイト数もタイ人で最も多かった。クラスBスカベンジャー受容体は各種リポタンパク質の代謝に重要であり、これらのレアバリアントはタイ人に特徴的な高い血中総コレステロール量・LDLコレステロール量の遺伝的背景の一部であると考えられる。またCD36およびSCARB1はそれぞれ個別の経路でマラリア原虫の感染・増幅に利用されていることから、これらのバリアントが同集団におけるマラリア抵抗性に寄与している可能性が考えられる。
|
Research Products
(10 results)