2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21688011
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市榮 智明 Kochi University, 教育研究部・自然科学系, 准教授 (80403872)
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Keywords | 熱帶雨林 / 東南アジア / ストレス応答 / 操作実験 / フタバガキ科 / 気候変動 / 一斉開花 / 林冠 |
Research Abstract |
この研究は、東南アジア熱帯雨林地域で今後予想される降水量の減少や短期的な乾燥頻度の増加が、熱帯雨林樹木の生理生態に及ぼす影響を評価することを目的とする。今年度は、研究の開始年度として、(1)熱帯雨林樹木の水分利用と形態的特性との関係、(2)熱帯雨林における過去の降水量変動と樹木の展葉・繁殖・肥大成長の相互パターン解析、(3)操作実験による強度乾燥が樹木の形態や生理に与える影響評価を行った。主な研究成果を以下に示す。 (1) マレーシア・ランビル国立公園において、林冠構成種20種の葉の形態と水利用との関係を調査したところ、異圧葉樹種(13種)は大径の道管を持ち、多量の水供給を可能にすることで高い光合成・蒸散能力を実現していた。一方、等圧葉樹種(7種)は小径の道管を持ち、光合成・蒸散能力は低いが、日中の水ストレスを低く抑えるという葉の形態に応じた水利用様式を持っていることがわかった。 (2) ランビル国立公園の樹木の肥大成長のタイミングと展葉や繁殖、降水量の関係を調べたところ、熱帯雨林の樹木の多くが、多雨期に当たる11月や12月には肥大成長速度が低下することがわかった。 (3) 操作実験による土壌水分の低下に伴い、フタバガキ科巨大高木の夜明け前の水ポテンシャルは対照個体よりも有意に低下し、土壌乾燥により水ストレスを受けていることが示された。また、植物の吸水力限界を示す指標となる膨圧損失時の水ポテンシャルも降水遮断期間中に有意に低下し、その値は日中の水ポテンシャルの最低値よりも常に低い値を示すなど、土壌水分の低下に対して、フタバガキ科巨大高木は葉の吸水能力を改善して耐乾性を高め、水消費を節約して対応していることが考えられた。
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Research Products
(8 results)