2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21688011
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (80403872)
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Keywords | 熱帯雨林 / マレーシア:シンガポール / ストレス応答 / 操作実験 / フタバガキ科 / 気候変動 / 一斉開花 / 林冠 |
Research Abstract |
この研究では、東南アジア熱帯雨林地域で今後予想される降水量の減少や短期的な乾燥頻度の増加が、熱帯雨林樹木の生理生態に及ぼす影響を評価することを目的としている。今年度は、(1)熱帯雨林の林内の光環境と樹木の形態的可塑性との関係、(2)熱帯雨林樹木の繁殖に及ぼす乾燥と樹体内貯蔵養分の影響、について評価を行った。主な研究成果を以下に示す。 (1)マレーシア・ランビル国立公園において、主要な林冠構成種であるフタバガキ科の4樹種について、異なる成育段階や樹冠位置での葉の形態的特性について調査した。その結果、いずれの樹木でも稚樹と成木では明らかに異なった形態をもち、同じ光環境でも成木の方が葉厚、LMA、気孔密度、トリコーム密度が高かった。しかし、成木と稚樹それぞれの生育段階では、各葉の受光量と気孔密度やトリコーム密度の間に明瞭な関係は見出せなかった。特に、成木では樹冠位置もしくは葉ごとに受光量が大きく異なるものの、全ての調査項目で樹冠位置や受光量での有意な違いは見られなかった。つまり、フタバガキ科の林冠構成種は、稚樹から成木に至る成育段階では大きく葉の形態が変化するものの、成木では樹冠位置や個葉レベルで例え光環境が大きく異なっていても、葉の形態的な可塑性はそれほど高くないと考えられた。 (2)フタバガキ科の巨大高木Dryobalanops aromaticaについて、成木約30個体の繁殖時期と降水量、及び各個体の樹体内貯蔵資源量の関係を調査したところ、多くの個体が同調的に繁殖を行う時期には常に短期間の少雨期間が観察されるものの、一部の個体は繁殖に参加しなかった。また、これら繁殖しなかった個体の幹のリン濃度は、繁殖を行った個体のリン濃度に比べ有意に低かった。つまり、この樹種の繁殖にはまず樹体内への貯蔵資源の蓄積が必要で、その後の乾燥による水分ストレスをトリガーとして繁殖を行っていることが考えられた。
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Research Products
(11 results)