2011 Fiscal Year Annual Research Report
サクラマス成熟雄の生理に影響を与える性フェロモンの解明
Project/Area Number |
21688016
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
山家 秀信 東京農業大学, 生物産業学部, 講師 (40423743)
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Keywords | 性フェロモン / 性ステロイド / サケ科魚類 / 尿 / トリプトファン代謝物 |
Research Abstract |
サケ科魚類における雄の血中ホルモン量など内分泌因子を増長させる性フェロモン(プライマーフェロモン)の存在は長年示唆されてきたが、コイ科の研究と同様にホルモナルフェロモン概念を踏襲しており、まだ誰もその物質を同定していない。サクラマスのプライマーフェロモンを同定すれば、既に同定済みの行動を誘起するリリーサーフェロモン(トリプトファン代謝物)と対を為すことにより、魚類における新たな性フェロモン機構とその多様性を示すことができる。 サクラマスの成熟雄の誘引行動を引き起こすリリーサーフェロモンの主成分は、排卵雌尿中に含まれるトリプトファン(Trp)代謝物のキヌレニン(Kyn)である。本年度は、サクラマスにおける成熟雄に対するTrp代謝物のプライマーフェロモン効果を調べることを目的とした。 早熟雄を丸型400L水槽に馴致した後、水槽に各種サンプル(DW、未成熟雌尿:IFU、排卵雌尿:OFU、排精雄尿:SMU、Trp、ホルミルキヌレニン:F-Kyn、Kyn、ヒドロキシキヌレニン:H-Kyn、これら4種混合液:Mix)を4ml注入し、指定した時間に採血と精液搾出を行った後、精液重量、生殖腺重量、体重、尾叉長を測定した。ELISA法を用いて血中のTestosterone、11-Ketotestosterone、17α,20β-dihydroxy-4-pregnen-3-oneを測定した。また、成熟雌雄の尿中トリプトファン代謝物4種について詳細に分析し、経時的な解析を行った。その結果、4時間曝露実験では、OFU、Kyn、H-Kyn、Mix曝露群の血中ステロイド量が有意に上昇した。経時的応答実験ではKyn曝露後、各種血中ステロイド量が2時間後から上昇し、5時間後にピークを迎え12時間後に減少する傾向が見られた。産卵期の前期または後期では、IFU、OFU、Kyn、H-Kyn曝露群で各種血中性ステロイド濃度の上昇が見られた。尿中成分の経時的な分泌パターンが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原尿のフェロモン効果を確信できた。また、その効果の経時的応答や濃度依存性も確認できた。次に、尿中のフェロモン候補成分を詳細に分析したところ、地理的変異は少なく、経時的変化や日周性が認められた。その結果に基づき、候補成分の混合液による曝露実験によりフェロモン効果を調べたところ、未知の成分の関与が予想された。
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Strategy for Future Research Activity |
過去に用いてきた材料は経代飼育魚であり、本プロジェクトで用いざるを得なかった材料は天然魚に近い物であった。そのため、行動特性が過去のものと異なるだけでなく、これまで注目してきた主成分以外に、副成分の存在や、候補成分数種による混合比が重要であることが示唆された。そのため、尿中成分比を反映させた混合溶液による各種曝露実験や行動実験を行ってきたが、未だ途中経過にある。繁殖期全体にわたり経時的に各種実験を実施する必要がある。
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