2010 Fiscal Year Annual Research Report
非コードRNAによるエピジェネティック脳機能制御の種間多様性
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21688021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 拓也 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90390682)
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Keywords | 非コードRNA / DNAメチル化 / 生物多様性 / エピジェネティック制御 / 脳 |
Research Abstract |
本課題は、ほ乳類脳のエピゲノム形成に関わるnon-coding RNA (ncRNA)制御メカニズムとその種間多様性を明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度までにpromomter-associated noncoding RNA (pancRNA)をサルで約400、マウスで約180同定した成果を元に、発現量が最も高い8つのサル特異的pancRNAの解析を進めた。例えば、サルCCDC65とHSPA2の転写開始点近傍からはpancRNAが発現しているが、そのマウスホモログであるCcdc65とHspa2からはpancRNAの発現は見られなかった。各転写開始点近傍の領域のDNAメチル化パターンを調べたところ、確かにサルとマウスの間で異なるDNAメチル化パターンが認められた。興味深いことに、サルCCDC65の場合、pancRNAの鋳型近傍に、ribosomal protein L32の偽遺伝子と高い相同性を示す配列が存在し、マウスでは相当する配列は存在していない。一方、HSPA2では、pancRNAのシグナルは下流のコード遺伝子の転写開始点付近のCpG islandと重なっていた。以上から、種特異的なpancRNAを生み出す2つのメカニズムが示唆される。一つは、レトロトランスポジションによりDNA断片がプロモーター領域に種特異的に挿入され、pancRNAの鋳型を獲得したというもの、もう一つは、元々両方向性の活性を持つGC含量の高いプロモーター配列に種特異的な変異が入ることで、その領域から転写されるpancRNAの発現パターンが変化したというものである。各種細胞株を用いた実験から、90%以上のpancRNAについて、その発現はmRNA発現に対して正に働いており、種の多様性創出にはmRNA転写スイッチの高次化が伴っていると考えられる。
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