2010 Fiscal Year Annual Research Report
光合成CO2固定酵素ルビスコの高機能化による植物光合成促進
Project/Area Number |
21688024
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
蘆田 弘樹 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50362851)
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Keywords | 光合成 / CO_2固定 / ルビスコ / ルビスコ祖先タンパク質 / 葉緑体形質転換 |
Research Abstract |
植物のCO_2固定酵素ルビスコは、O_2をCO_2と誤認識するため触媒効率が低く、光合成を律速している。 このため、O_2反応性抑制によるルビスコ高機能化が、植物光合成能を増大させると期待される。本年度は、ルビスコ機能進化解析による高機能化部位の同定(1)と同定した部位の植物ルビスコへの導入効果解析(2)を行った。(1)ルビスコ触媒残基のいくつかを欠きCO_2固定能を持たないルビスコ祖先タンパク質にルビスコ触媒残基を導入した結果、枯草菌、紅色非硫黄細菌の導入型祖先タンパク質からはルビスコ触媒活性を検出できなかったが、気管支肺血症菌祖先タンパク質では活性が検出された。この結果から、導入した残基中にルビスコ触媒反応に関わる残基が存在すると期待された。また、枯草菌祖先タンパク質の構造活性相関解析から、この酵素の触媒能を活性化する残基を同定した。(2)O_2反応性が低い紅藻ルビスコの高機能化残基H386の導入は、ラン藻ルビスコのO_2反応性を17%抑制する。この高機能化残基をルビスコに導入した葉緑体形質転換タバコのラインを確立し、解析を行った結果、高機能化残基導入タバコはコントロール株と比較してルビスコ量が約70%に減少しているものの、葉のCO_2固定速度はほとんど変わらなかった。このことは、ルビスコの高機能化に成功していることを示唆していたが、高機能化効果を最大限引き出すにはルビスコの量的増加が望まれた。ルビスコ量増加を可能とするルビスコ生合成遺伝子を同定するため、ルビスコ量が低下したシロイヌナズナ変異株を単離し、その原因遺伝子の解析を行った。15変異株を単離し、ルビスコ生合成に関与する転写活性化因子や翻訳装置合成因子遺伝子を同定した。この研究により、ルビスコ生合成の律速段階遺伝子が同定できれば、これらを発現強化することにより、高機能化ルビスコ量を増加させることができると期待される。
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