2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノキャリア腫瘍集積を支配するEPR効果の検証とその能動的制御による革新的DDS
Project/Area Number |
21689002
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石田 竜弘 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50325271)
|
Keywords | DDS / がん治療 / 抗がん剤 / リポソーム / 腫瘍内微小環境 |
Research Abstract |
本研究では、(1)ナノキャリアに対するEPR効果について詳細に再検討するとともに、(2)腫瘍内血管系に影響する薬剤投与時のEPR効果の変化について詳細な検討を行い、抗がん剤デリバリーの限界を打破する戦略を構築することを最終目的とした。 3種類のがん細胞をそれぞれマウスに移植し、PEG修飾リポソームの腫瘍移行性と腫瘍内分布性を定性的および定量的に評価した。その結果、透過性の高い血管系を有する腫瘍においてPEG修飾リポソームの腫瘍移行量および腫瘍内拡散性が大きい事が明らかとなった。血管の透過性を支配する要因に関しては未だ不明であるが、腫瘍の増殖状況と密接に関係する可能性が示されており、興味深い。本検討で得られた結果は、腫瘍の状態がナノキャリアの腫瘍移行性を支配している事を示唆するものであり、腫瘍へのDDSを開発するにあたり、研究代表者が提唱する"腫瘍内微小環境の能動的制御"が重要である事を改めて支持するものである。 Vaso-activedrugとして知られるAvastinを併用した際のPEG修飾リポソームの腫瘍移行性に関しても検討を行った。研究代表者は既にフッ化ピリミジン系抗がん剤であるS-1を連日経口投与するとPEG修飾リポソームに対するEPR効果が:亢進され、腫瘍移行性が高まる事を報告している。また、このような現象はリポソームをキャリアとした核酸デリバリーにも応用できる事を明らかにする事ができている。これに対して、Avastinを投与した場合、むしろPEG修飾リポソームの腫瘍への移行性は抑制される事が明らかとなった。これは、Avastinが有する血管阻害作用が強すぎ、血行性で移行するリポソームの腫瘍への流入を阻害してしまったからであると考えられた。 以上の結果から、vaso-activeな薬剤投与により、ナノキャリアの腫瘍内移行性が改善される場合があるものの、一方でその作用が強い場合にはむしろ移行性が抑制させる可能性もある事が分かった。この事は、ナノキャリアの腫瘍移行性を高める最適な投与レジメンがある事を示唆しており、抗がん剤デリバリーの限界を打破する戦略を構築する上で有用な情報であると言える。
|
Research Products
(13 results)