2010 Fiscal Year Annual Research Report
次世代の移植肝灌流保存法の開発に向けた至適条件の網羅的解析
Project/Area Number |
21689035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秦 浩一郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (90523118)
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Keywords | 臓器移植 / 生体肝移植 / 臓器保存 / 灌流保存 |
Research Abstract |
平成22年度は、昨年度に開発した定圧式経門脈・肝動脈灌流保存装置を用いて、ラット肝灌流保存の至適条件を解析した。HTK液を用いた単純冷保存150分+温虚血30分を対照群とし、灌流保存群として重炭酸リンゲル液(BCR)、HTK液、IGL-1液を用いて灌流保存180分を施行した。保存後のグラフト肝機能はIsolated perfused rat liver (IPRL)にて評価した。 (1)4℃の灌流保存においては灌流液の種類、経路に関わらず、肝逸脱酵素、胆汁産生量などは対照群と同等であったが、灌流圧が高くなる程、肝小葉の破壊が認められた。 (2)25℃においては、門脈灌流のみではグラフト肝の酸素要求を満たす事が出来ず、保存中より肝細胞の脱落壊死を認めた。門脈・肝動脈同時灌流保存では肝逸脱酵素、胆汁産生量などは対照群と同等であったが、電子顕微鏡にて確認したところ、類洞構造の破壊は軽微であり、類洞壁細胞は比較的よく保存されていた。 (3)37℃まで上昇させた場合、確認した全ての群で対照群より悪成績であった。 (4)BCR群のみ、37℃、100mmHgの動脈灌流で保存時間を15、30、45、60分とした群を作成し、IPRLで評価したところ、保存時間30分までは肝細胞・類洞壁細胞ともによく保たれていた。 以上より、(i)灌流保存は肝細胞のみならず類洞壁細胞の保存により優れている可能性、(ii)現存の灌流保存液では、より生理的な保存環境を提供するには至らない可能性が示された。研究計画の時点で灌流保存液の候補としていたPolysolは、現在、特許の問題で市販化の道が閉ざされている。今後新たな灌流保存液を開発し、動脈/門脈同時灌流の条件を整える事が、常温灌流保存実現の道を開くものと考えられた。
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