2011 Fiscal Year Annual Research Report
男子不妊症における転写因子複合体ネットワークの包括的解明と遺伝子治療への応用
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21689043
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
小島 祥敬 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60305539)
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Keywords | 男性不妊 / 遺伝子導入 / 転写因子 / ネットワーク |
Research Abstract |
DAX1は、先天的副腎低形成・性腺機能低下症の原因として同定された転写因子である。先天性DAX1遺伝子異常症の男児では、思春期の二次性徴が欠如しゴナドトロピンと無関係の造精機能障害を呈する。DAX1はライディッヒ細胞とセルトリ細胞に発現するが、ゴナドトロピンと無関係であり精巣独自における機能が注目されている。しかし、DAX1の精子形成に果たす役割は未だ解明されていない。DAX1の機能解明と今後の遺伝子治療を目的に、DAX1の精巣内遺伝子導入の効果を検討した。 in vitroにおける検討:DAX1と蛍光タンパクEGFPの両方を発現するアデノウイルスベクターを作製し、ライディッヒ細胞株TM3とセルトリ細胞株TM4に遺伝子導入した。アデノウイルスベクターによりTM3、TM4細胞の核内にDax1遺伝子の導入が可能であった。TM3細胞ではステロイド合成に関わるArom遺伝子、TM4細胞では精子形成細胞の増殖に関わるScf遺伝子の発現が有意に亢進していた。ラット精巣において、精巣間質注入法ではライディッヒ細胞に、精細管内注入法ではセルトリ細胞に、DAX1の強発現を認めた。精子形成細胞へは遺伝子導入されなかった。 核内転写因子DAX1は、ライディッヒ細胞ではエストロゲンの合成制御、セルトリ細胞ではSCFの発現制御を行っていると考えられた。思春期以降の精子形成には、セルトリ細胞におけるDAX1の発現が密接に関わっている。セルトリ細胞でDAX1により発現調節されたSCFが精子形成細胞に存在する受容体(C-KIT)に結合しSCF/C-KITシグナル伝達経路を介することで精子形成を促進している可能性が示唆された。ラット精巣へのアデノウイルスベクター投与では、ライディッヒ細胞もしくはセルトリ細胞選択的に遺伝子導入が可能であった。精子形成細胞へは遺伝子導入を認めなかったことから次世代伝搬性もなく安全性の高い遺伝子導入法と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルトリ細胞、ライディッヒ細胞へのDAX-1の遺伝子導入と遺伝子発現解析については標的遺伝子を明らかにし、機能解析もほぼ終了し計画以上の進展を認めるが、プロモーターアレイによるAd4BP/SF-1およびDAX-1の標的遺伝子群の同定については、やや遅れ気味であり、総合的にはおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画がかなり細分化されており、長期にわたる研究であるため、その都度軌道修正する必要があると考えていた。年単位で研究計画を見直し、その都度適切な研究計画を再立案する予定であったが、おおむね順調に進展しているため、予定通り研究を進めたい。
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