Research Abstract |
本研究課題では,材料工学の分野で応用利用されている高解像度のイメージング機器を感染症学分野においても取り入れ,組織内に侵入した微生物が免疫系を回避する機構について,経時的に解析を進めることを目的とし実験を進めた.具体的には,タイムラプス顕微鏡を利用した経時的な感染現象の解析,あるいは高速スキャン型原子間力顕微鏡を用いて,A群レンサ球菌の病原因子が宿主免疫分子を分解・阻害する過程を観察した. 研究1. 補体C3b分解酵素が好中球貪食能に及ぼす影響のタイムラプス顕微鏡分析 寒天平板培地を用いたフレート実験法では,A群レンサ球菌の補体C3b分解酵素を欠失させると,末梢血液中での抗貪食能が低下した.しかしながら,この手法ではC3b分解酵素が,どのような細胞やいかなる液性(補体)成分に,いつ作用することで自然免疫系に影響を及ぼすのかを明らかにできなかった.そこで,タイムラプス顕微鏡下で,C3b分解酵素欠失株もしくは野生株と好中球および血清(補体)を混合し,経時的に観察した.その結果,C3b分解酵素欠失株と比較し,野生株では好中球による細菌捕獲が進まないこと,さらには,捕獲した細菌が好中球の食胞からエスケープする頻度の高いことが示された. 研究2. 細胞膜侵襲性補体複合体(MAC)形成を阻害するA群レンサ球菌由来分子の検索 MACの構成成分である補体C6に結合するA群レンサ球菌由来のタンバクを同定した(C6BP).次に,高速スキャン型原子間力顕微鏡下で,補体成分C5b~C9がMACを形成する過程を検鏡するための条件の至適化を行った.そして,C6BP添加した場合,MAC形成が阻害されることをタンパク分子レベルで経時的に撮影することに成功した.さらに,高速スキャン型原子間力顕微鏡を「研究1」に応用し,C3b分解酵素が補体C3bを分解する過程を分子スケールで解析した.
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