Research Abstract |
皮膚創傷治癒過程は,炎症細胞浸潤主体の炎症期,再上皮化,肉芽形成,血管新生の増殖期,過剰に生産された細胞外基質が分解される成熟期からなる生体防御反応で,一連の過程は細胞表面やサイトカインを介した細胞間相互作用で制御されている.通常,創傷治癒後に瘢痕が残るが,胎生期の皮膚創傷修復部位では瘢痕が形成されず,皮膚組織が完全に再生する.この場合,創傷部位に炎症細胞の集簇が観察されないことから,炎症細胞が瘢痕形成に深く関与していると示唆されるが,その分子メカニズムは未だ明らかでない。平成21年度では次世代シーケンサーを用いて、マウス皮膚創傷治癒過程において発現誘導されるmiRNA(マイクロRNA)の網羅的同定に成功し,皮膚創傷治癒過程において発現誘導される既知miRNA群を335種類,miRNAと推測される未知のmiRNAを183種類同定することに成功した.本年度では,炎症反応に関連するmiRNAの抽出,発現細胞の同定を行った.定量PCR法を用いてさらに詳細な発現動態の解析を行った結果,炎症反応特異的に発現誘導される7種類のmiRNA群の抽出に成功した.さらに,miR-147は,受傷後1日目の皮膚損傷部に集簇している好中球に発現されていることが明らかとなった. 本研究によって同定された炎症反応関連miRNAは,多数の炎症及び組織修復に関与する遺伝子に作用すると考えられることから,miRNAを介した遺伝子発現制御機構に重要な役割を果たしていると考えられる.今後は,更なる詳細な機能解析を行い,miRNAもしくは線維化関連遺伝子群を標的とした,新規治療法の確立を目指す.
|