2010 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチン化システムに基づいた歯周組織幹細胞のサイトカインシグナルクロストーク
Project/Area Number |
21689053
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (90524984)
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Keywords | 歯周外科学 / シグナルクロストーク |
Research Abstract |
Balb/Cマウスの歯根膜組織より採取した細胞を限界希釈することにより樹立した細胞MPDL22は石灰化誘導培地中で高い硬組織形成能を示した。ユニークなことに同細胞株はFGF-2刺激により強い細胞増殖応答が誘導される一方、BMP-2誘導性の硬組織形成の著明な抑制を示すことをアリザリン染色法並びにMTTアッセイにて確認した。その際にFGF2刺激はMPDL22細胞膜上のFGF受容体(主にFGFR1)を介して細胞内に伝達され、受容体下流のシグナルとして、FRS2-Ras-MAPK経路を用いていることを小分子化学化合物を用いたスクリーニングにより同定した。興味深いことにFGF1型受容体のチロシンキナーゼ阻害剤であるSU5402はBMP2添加下のMPDL22の硬組織形成を著しく亢進した。これは歯根膜幹細胞は硬組織形成過程において自己或は微小環境構成細胞より分泌されるFGF-2により負に制御されていること、その標的経路の一つが細胞内BMP2シグナル経路であることを示唆するものである。 分子生物学的な解析の結果、FGF-2/MAPK経路によって活性化されたErkがSmad1のLinker部位に位置するSer206をリン酸化し、BMP/BMPRによってリン酸化されたSmad1のC末端のリン酸化を調節すること。結果としてSmad1の直接の標的遺伝子の発現を制御し、骨関連蛋白質(osteonectin,BSP,osteocalcin,osteopontin,collagen typeII&III etc.,)や特徴的な細胞外基質(歯根膜特異的な基質蛋白である、collagenXIIならびにPLAP-1、創傷治癒時に発現時に高まるヒアルロン酸やヘパラン硫酸などのプロテオグリカン)や骨分化の指標となる転写因子(Cbfa-1,Osterix,Dlx5)などの転写制御を通じて歯根膜細胞の恒常性を維持しているメカニズムの一端を明らかとした。複数のサイトカインによる細胞内シグナル伝達系のクロストーク制御に着目した新規の歯周組織再生に有益な分子標的薬開発の基盤情報となる重要なものである。
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