2011 Fiscal Year Annual Research Report
縮約密度行列による電子構造計算の新アルゴリズム提案
Project/Area Number |
21700008
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福田 光浩 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 准教授 (80334548)
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Keywords | 電子構造計算 / 縮約密度行列法 / 半正定値計画問題 / 主双対内点法 / 大規模最適化問題 / 加速勾配法 / 凸計画問題 / 並列計算 |
Research Abstract |
量子化学において最も基本的な問題の一つとして原子や分子の電子構造計算を求める問題がある.縮約密度行列法によるアプローチはこの難解な問題を凸計画問題である半正定値計画問題として近似するものであり,数値的にも魅力的であることが異なる研究グループによって実証されている.しかし,その計算時間が通常の方法とは桁違いに遅いため,実用というよりは理論的な近似という意味合いがまだ強い.そのため,新しい数値解法を探っている. 本年度は当初予定していた計算機実験による検証よりは理論面を重視した.大規模な半正定値計画問題を主双対内点法に代わって高速に解くことが期待されている1次法(加速勾配法とも最近呼ばれている)の理解が不可欠であるからである,特に,Yu.Nesterovらによって提案されたこの手法の原点に戻ってアルゴリズムの本質を探った.また,A.Nemirovskiiらが提案したmirror-prox法,古くから知られているproximal-gradient法も緻密に関係していることから,理論的に良い性質を持つアルゴリズムはかなりの柔軟度で提案できることが確認できた.それらのことから得られた知見は必ずしもまだ実用的ではないが新しい改良アルゴリズムを提案するのに有効だと期待している. そして,これまでの縮約密度行列法に関連する理論と数値結果の歴史的な事実をサーベイした論文をまとめあげた,昨年度得られたスピン軌道数36を用いた分子の計算結果は今まで主双対内点法を用いて解かれた問題では一番大きいものであり,その詳細についてもこの論文に初めて記載した. Hartree-Fock法を最適化問題として厳密に解く研究に関しては残念ながらまだ取り込み中で歴然とした結果が得られていない.
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