2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700140
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
渡辺 貫治 Akita Prefectural University, システム科学技術学部, 助教 (20452998)
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Keywords | バーチャルリアリティ / 空間音響 / 頭部伝達関数 / 聴覚ディスプレイ / GPGPU |
Research Abstract |
本研究では,音響バーチャルリアリティを実現するために,仮想的な音源を使用者に提示する聴覚ディスプレイシステムを,計算性能に比較的制限がある携帯機器において実装することを目的としている.従来のほとんどのシステムは,高性能な計算機や専用のDSPを用いて実装されているが,携帯機器の性能が比較的低いことや消費電力を考慮して,聴覚の性質に基づく計算量の低減及び汎用のプロセッサを用いた実装について検討を行っている. 当該年度は,まず計算量の低減について検討を行った.仮想音源を実現するために,音源から出た音が聴取者の鼓膜に届くまでの伝搬による周波数特性の変化を再現する方法が良く知られている.この伝搬による周波数特性の変化分を「頭部伝達関数」と呼び,それをディジタルフィルタとして音信号に畳み込むことで,原理的に任意の仮想音源を計算機上で生成することができる.頭部伝達関数は,聴取者の頭部や耳介などにおける反射・回折の影響を含んでおり,一般的に複雑な特性となる.しかし,聴覚の性質を踏まえると,ある程度簡略化しても仮想音源の知覚に影響しないと考えられる.そこで,当該年度では,頭部伝達関数の周波数特性を知覚に影響しない範囲で簡略化が可能かどうかを明らかにする聴取実験を行った.その結果,低域に関しては1kHz以下,高域に関しては音源と反対側の耳に対する4~8kHz以上の帯域を簡略化しても,仮想音源の知覚に影響しないことが示された.このことによって,知覚に影響しない帯域に対して畳み込み処理を行う必要がなく,計算量の低減が可能となった.さらに,複数の仮想音源を生成する場合でも,簡略化可能な帯域に関しては音源の数に関わらず処理の負荷は一定となる.したがって,実環境に近い仮想音空間を実現する場合に,当該年度の成果が大きく寄与するといえる.
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Research Products
(5 results)