2009 Fiscal Year Annual Research Report
運動と認知の脳内統合モデルに基づいた巧緻運動困難な学習障害児への支援
Project/Area Number |
21700150
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
矢田部 清美 National Center of Neurology and Psychiatry, 精神保健研究所知的障害部, 協力研究員 (90455410)
|
Keywords | 運動 / 認知処理 / 学習障害 |
Research Abstract |
本研究の課題は,巧緻運動困難を持つ学習障害児への支援インターフェース構築に向け,認知特性・障害機序を明らかにすることである。本研究課題の特徴的な点は,健常者及び学習障害者に対する検査結果に基づき,行動特性だけでなく,(行動結果に反映されない)認知特性も生かした工学的支援の基礎となる知見を得ることを目標とする点である。 そのため,昨年度は下記三点のことを明らかにし,国内外の関連学会で発表した。(1)視覚性複雑度・音韻性複雑度を統制した読解及び書字検査を学習障害児群に施行した結果,健常小児群の平均成績と照らし合わせて学習障害児の成績を分析すると,その行動特性が複数の群に類型化されることを示した。類型化の結果は,読解だけに困難を持つ群に比べ,書字だけに困難を持つ群は,複雑な文字の識別や書字運動の想起に問題があることを示唆した。(2)健常小児群に比較し,学習障害児群は読解中の巧緻運動である急速眼球運動に問題があるかをEOG(眼電位図)測定法を用いて検証した。その結果,学習障害児群では,水平性眼球運動自体では健常小児群に比較し統計的差異がみられないが,周辺視野の手掛かり刺激がある場合に,急速眼球運動の潜時延長や,眼球運動と並行した文字識別の成績低下がみられた。検証結果は,読解中に必要な周辺視野を用いた眼球運動や並列処理に学習障害児は困難があることを示唆した。(3)運動を観察中にその運動の想起が運動関連領域の脳内活動に現れるかどうかを健常成人群で電気生理学的手法を用いて検討した。その結果,観察された運動や運動結果により運動前野等の運動関連領域の脳内活動に変化が現れることを示した。検討結果は運動観察中にも自己の対応する運動関連領域が活性化することを示唆した。
|
Research Products
(3 results)