Research Abstract |
本研究では,経済新聞記事に含まれる企業業績に関する記事から,その業績要因を自動的に抽出し,さらに,抽出した業績要因に対して当該企業業績に対する重要度を自動的に付与することで,抽出した業績要因を投資判断の支援だけでなく,景気予測,技術動向予測などの用途に使用することのできる情報に変換することを目的とする.今年度は,以下の研究項目を推進し,いくつかの成果を得ることができた. 1. 業績要因への極性付与手法の有効性の検証:我々は既に予備的検討として,業績発表記事から抽出した業績要因に対して業績に関する極性(ポジティブ,ネガティブ)を付与する技術を開発していたが,今年度は,開発した手法と様々な既存手法との比較実験を実施した.その結果,既存手法に比べて大幅に性能が向上しており,開発した極性付与手法の効果を確認することができた.業績要因表現は複数の文節で構成されるため,同一の表現が業績発表記事集合中に出現しない.そのため,特定の語との共起頻度を使用する既存手法では精度の高い極性付与は困難であり,比較実験でもそのことが示された.しかし,開発した手法では,業績要因表現を手がかり表現(が好調等)と共通頻出表現(売り上げ等)の対に簡略化することで,上記の問題点を解決した. 2. 企業の本業と関連のある業績要因を判定する手法の開発:業績要因に重要度を付与する前処理として,業績要因が当該企業の本業と関連があるか否かで分類する手法を開発した.分類にはSVMを使用し,素性として形態素のユニグラム,バイグラムを使用した.評価実験の結果,正解率95.3%を達成し,良好な結果を得た.また,イベントスタディ法に基づく分析によって,業績要因を含む業績発表記事が株式市場に対し影響を与えている可能性があることが示された. 3. 経済新聞記事から抽出した景気動向を示す根拠表現への極性付与手法の開発:研究項目1の手法を,「米国景気悪化」や「公共投資の伸び」といった景気動向を示す根拠表現に対して極性(ポジティブ,ネガティブ)を付与するタスクに適用した.そして,景気動向を示す新聞記事の段落に対して極性分類を行い,その情報を根拠表現への極性付与に使用するといった改良を施し,研究項目1の手法をそのまま適用する場合よりも良好な結果を得た.
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