2009 Fiscal Year Annual Research Report
音声に対する事象関連電位を予測する計算論的神経モデル
Project/Area Number |
21700160
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
杉本 俊二 Toyohashi University of Technology, 工学部, 助教 (50422811)
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Keywords | 事象関連電位 / 計算モデル / 音声言語 / 意味的・統語的処理 / 文脈 |
Research Abstract |
音声の意味的,統語的処理に関連した事象関連電位(ERP)として過去に様々な成分が観察されているが,音声信号のみから定量化にERPを予測する方法は発見されていない.そこで本研究では,音声の振幅包絡に依存したERPを音声信号のみから予測する定量的モデルの作成を試みた.本研究の仮定として,音の振幅信号Env(t)は,末梢聴覚フィルタのインパルス応答の包絡線Imp(t)によって積分され,次いで求心性神経経路で音の変化分を強調するように(微分的あるいは積分的に)符号化N[Imp(t)*Env(t)]されると考えた.さらに,このような処理過程が,聴覚フィルタのインパルス応答の包絡線に対する神経系での符号化演算後に音の振幅信号との間で畳み込み積分を行った波形N[Imp(t)]*Env(t)によって近似されるとした.これは,聴覚フィルタのインパルス応答に対する神経系での符号化演算を何らかの形で近似的に求めることによって,音声の振幅包絡に対するERPを予測できることを意味する.独立成分分析(ICA)により抽出したトーンバーストに対するERP成分を用いて上述の符号化演算を求めることによって,実際に音声に対するERPの予測を試みた.ICAによって得られたN1,P2a,P2b,N2成分を利用して音声の振幅包絡から脳波を予測した結果,前頭部,前頭-中心部,中心部において,実測波形と予測波形の有意な正の相関が示された.以上のように,これまでの研究では,トーンバーストに対するERPと音声の振幅包絡を用いて,音声に対するERPの特徴を予測できるという画期的な結果が得られている.本成果は,音声の意味的・統語的処理の理解へ向けた新たな脳研究の発展に貢献する道を拓くという点で重要であると考えられる.
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Research Products
(6 results)