Research Abstract |
サブシステム間が協力し,システム総体として新たな機能獲得を目指す機能創発型システムは,応用範囲が広く発展が期待されている.しかしこのようなシステムは,非線形性がシステムの本質にかかわっており,システムの安定性や制御性の劣化といった問題から,設計が非常に難しい.そこで本課題では,具体的なシステムの構築と実験評価を通じて,機能創発型システムの安定性と制御機能を分析し明らかにすること,またそれらを踏まえ,安定性確保や制御機能低下防止の方法論への展開を目指して研究を進めている.これまでに,階層型分散協調システムを提案してきた.このシステムは,最下層にローカルな情報に基づき協調的に単純な行動選択のみを行うミクロ探索エージェント,その上位層にミクロ探索エージェント群から構成される異なる解空間をもつマクロ探索エージェント層,これら各層での複合的な協調により,システム総体として特定の機能を創発するシステムである.本年度は,基礎となる分散システムをネットワーク上に構成する技術について,幾つかの試行を行った.ネットワーク上ではノードがエージェントにあたり,それらの協調はパケットやコンテンツの授受により実現される.特に,合意形成理論に基づいたネットワーク構築実験では,各エージェントは自身の興味にのみ従い行動を行うが,ネットワーク全体としては意図的なコンテンツとエージェントのクラスタが構成され,ネットワークが最適化されることを確かめた.これは従来の規則的あるいはランダム的なネットワーク構成法とは異なり,現実社会に散見される事象を模倣したシステムであり,エージェント間協調とその安定性分析の課題として本課題に寄与するものである.しかし,その安定性や制御機能についての検証は浅く,今後はこれらの分析も並行して進めていく予定である.
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