Research Abstract |
本研究は振幅変調(AM)や周波数変調(FM)された高周波振動に対する触知覚特性に着目し,1)ヒトの触知覚の本質を明らかにする,2)その特性を利用した工学的な応用を提案する,という二点を目指すものである。 本年度は,ヒトの皮膚の弾性的性質がその感度に及ぼす影響を調べた.ヒトが振動を知覚する際,対象の振動が皮膚の振動に変換され,その変形が受容器により検出される.したがって,ヒトの皮膚の弾性的性質は,ヒトの振動知覚特性に大きな影響を与えているはずである.これを調べるため,ヒトの手指のステップ応答を測定するシステムを実現した.部位ごとの振動特性を計測し,その部位の周波数感度特性と比較した.その結果,ある受容器においては皮膚の弾性的性質の影響が少ない一方,別の受容器ではその影響を強く受けることを示唆する結果を得た. このような触知覚の解明という研究とは別に,これら知見を実際に触覚インタフェースとして利用する方法の提案も行った,ヒトは1kHz以上の高周波振動は知覚できない.しかし,それが振幅変調されると,その包絡を知覚できることが知られている.振幅変調振動は,2つの近接する高周波振動の和として表されるため,離れた2点から周波数の異なる高周波振動を提示すると,両者が加算された部位においてのみ振動覚が得られることになる.本研究ではまず,このことを明らかにした.また,この特性を利用し,モバイルタッチパネル端末において,接触した操作部においてのみ触感を提示する新しい手法を提案した.デバイス側と爪側とから,異なる高周波振動を与えることで,この手法は実現される. なお,この研究は,日本バーチャルリアリティ学会において発表し,学術奨励賞を受賞した.
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