2009 Fiscal Year Annual Research Report
残響下で高齢者や非母語話者に明瞭な録音音声・肉声による拡声音声の調査
Project/Area Number |
21700203
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
程島 奈緒 Sophia University, 理工学部, 研究員 (40453609)
|
Keywords | 音声 / 公共空間 / 発話 / 雑音 / 残響 / 高齢者 / 非母語話者 / 明瞭度 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は、駅などの公共空間で雑音や残響の影響を受けにくい音声案内を拡声することで、高齢者や非母語話者などの利用者が音声案内を聞きやすくする「音声によるバリアフリー」の実現である。本研究では、人が発話をする際に周囲の音環境によって発話方法やその明瞭度が変化する現象を応用し、公共空間の音声案内の多くで使われる静かな環境で録音した音声を拡声する方法(発話時と案内を聞く音環境が異なる)よりも、公共空間に存在する雑音や残響下で発話された音声を拡声する方法(発話時と案内を聞く音環境が同じ)の方が、音声案内が聞きやすくなる可能性を提案する。今年度は、上記の両方法において、発話をする環境と利用者が聞き取る環境を模擬し、発話側として音声の録音と音響分析、聞き取り側として若年者に対する聴取実験を以下のように行った。 1) 発話:静かな環境での発話、雑音/残響音をヘッドホンから聞きながらの発話を6名分録音した。録音音声の音響分析の結果から、ピッチやフォルマントなどの周波数情報、単語の長さなどの時間情報、子音対母音のインテンシティ比などの振幅情報が、雑音/残響下の発話の方が静かな場所での発話と比べて変化した(振幅情報以外は増加)。 2)聞き取り:上記の録音音声に雑音/残響を加えた音声を用い、若年者32名に対して聴取実験を行った。その結果、雑音や残響下の発話の方が、静かな環境での発話よりも単語の正解率が上昇した(雑音下で約12%、残響下で約15%上昇)。 以上より、音声案内を拡声する空間の雑音や残響を聞きながら発話をした方が、空間の情報が与えられない場合よりも音声明瞭度が上昇することが示された。またその明瞭度の増加は、周波数・時間・振幅の特徴が雑音/残響下で変化する事と相関が得られた。以上の結果を公共空間における音声案内の録音に応用することで、より明瞭な音声案内を提供できる可能性が示された。
|
Research Products
(2 results)