2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳幹神経ネットワークによる発声の聴覚フィードバック制御モデル
Project/Area Number |
21700209
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小林 耕太 Doshisha University, 生命医科学部, 助教 (40512736)
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Keywords | センサー統合・統合 / 聴覚フィードバック / コウモリ |
Research Abstract |
本研究計画の目的は,発声の聴覚フィードバック制御の神経メカニズムを明らかにすることである。実験動物を使用することで脳幹部の神経ネットワークによる聴覚-発声制御のメカニズムの解明を目指す。その成果は,発話障害の理解を助け,障害の治療法の開発に必要となる発声制御に関する基礎的な知見を与えてくれると期待できる。 2009年度はキクガシラコウモリ(Rhinolophus ferrumequinum)をモデル動物として,発声周波数の実時間フィードバック制御においてフィードバックゲインを調整すると考えられる部位(下丘外側核:ICX)の解剖学的同定をおこなった。脳幹部における聴覚の中枢,下丘(Inferior colliculus)の腹側部付近がそれにあたる。同部位周辺の神経活動を局所的(±250μm)に変化させる物質(MuscimolおよびKynurenic Acid)を注入したところ周波数のフィードバック制御の精度が改善する(±600H→±120Hz)現象が観察された。また薬理操作を行った部位については組織化学的な同定をおこなった結果、ICXがその部位であった。 これとは別にキクガシラコウモリを対象として,発声を直接制御する脳幹の神経核(疑核:Nucleus ambiguous)において周波数,発声の持続時間,発声間間隔を制御する部位を同定した。上述の実験と同様の手法を用いて疑核およびその周辺に神経活動(Muscimol, AMPA, Bicuculline, Kynurenic Acid)を操作する物質を注入することで,発声のパラメーを制御する神経部位の機能局在を検討した。結果,上述3つの発声パラメータは過去の研究およびコウモリ以外の哺乳類と比較して,解剖学的に極めて限局・独立した部位が制御を司ることが分かった。以上の結果は発声のフィードバック処理を担う回路は制御パラメータ毎に独立していることを示唆する。
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