2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境の色が心身に与える持続的な効果に関するバイオマーカー研究
Project/Area Number |
21700236
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
野村 収作 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 産学融合特任准教授 (80362911)
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Keywords | 感性生理生理学 / 感性計測評価 / 感性環境学 / 色 / ストレス / 唾液 / ホルモン / 精神神経免疫内分泌学 |
Research Abstract |
本研究の目的は「環境の色が心身へ及ぼす影響を唾液中のホルモン・免疫(バイオマーカー)により評価する」ことにある。学術的には、従来の生理心理研究で用いられてきた脳波・心電図・血圧に加えて人間の免疫・内分泌系の指標を新たな評価軸として導入し、その新たな評価指標としてのフィージビリティー・スタディを行うことにある。本研究では、従来の色環境評価研究で用いられてきた脳波・心電図・血圧などとともに生理機能の異なる7種のバイオマーカーを導入することで、人間の身体・心理に与える影響について統合的に評価する。当該年度では、当初の研究計画どおり青・赤・無色という単純な色環境においてストレス負荷実験を実施し、その生理効果を脳波・心拍数変動・血圧、および、唾液バイオマーカーにより統合的に評価した。その結果、従来指標(脳波・心拍数変動・血圧)では色の効果は統計的に認められなかったものの、青色呈示時において7種類のバイオマーカーの内、1種のみにおいて有意なストレス反応の低下が確認された。さらに興味深いのは、このバイオマーカーの反応は心理指標(アンケート)による環境の好悪や自覚ストレスとは無関係であった。従来指標を用いた過去の研究では、赤色は生理的活性および生理機能の亢進を促し、青色はその反対の生理効果を及ぼすことがしばしば言及されているものの、その効果を確認できないとする研究報告も多い。このことは、あるレビュー文献によれば、そもそも色が生体に及ぼす生理効果が非常に小さいため、統計的に有意差をもって眺めるには至らないということが指摘されている。これに対し、本研究申請ではバイオマーカーの緩除な生理反応特性に言及し、バイオマーカーを用いた環境の持続的な効果を評価できる可能性について提案したが、当該研究はその目論見どおりの結果を示すものと考える事ができ、学術的に有意義な知見を得ることができた。
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