Research Abstract |
本研究の内容は 研究目的1:生理指標を用いた楽曲聴取中の異なる感情状態の推定 研究目的2:ユーザの利用目的と感性に合った楽曲を自動的に作り出すシステム の2つに大別される.今年度は研究目的1の内容を実施し,研究目的2については簡易システムを構築した. まず,感情状態推定を行える生理指標として心拍間隔を用いた実験を行った.ここでは,最終的な狙いである自動作曲システムへの応用を目指し,異なる音刺激を交互に聴取した際の心拍間隔の値の変化と反応時間に着目した実験を行った.音刺激には,2分間程度の白色雑音とリラクセーション楽曲を用いた.連続的な刺激の聴取における心拍間隔の値を観察したところ,心拍間隔が有意な変化を示すまでに要した時間は30秒程度であった.また,音刺激に対する主観的なリラックス感については,リラクセーション楽曲において有意にリラックス感が高い結果となった. 次に,上記の結果に基づき,生理指標を評価値とする進化計算システムを構築した.システムの目的は,ユーザに合ったリラクセーション楽曲を生成することである.進化計算としては,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた.GAは,ある問題に適した解を探索するアルゴリズムであるが,ここではユーザに合うリラクセーション楽曲が最適解となる.また,通常のGAではなく,ユーザの好みなどを反映するための手法として知られる対話型GAを用いる.当初の予定では,複数の生理指標を用いることになっているが,ここではその簡易版として,心電図のみを計測し,心拍間隔と心拍間隔変動を指標として用いる.検討段階であるため,十分な被験者数は用いてないが,GAの世代更新に伴い評価値が上昇する傾向が伺えた.また,関連して,楽曲のテンポに対する印象や,進化計算により香りの最適化などに関する研究を行った.将来的には,課題研究とこれらの研究を統合する予定である.
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