Research Abstract |
本研究では,個人の感性・好みに合うメディアコンテンツを自動生成する手法として,対話型進化計算における評価値をユーザの生理指標を利用する手法の提案と,具体的なシステムの構築による有効性の検証に取り組んできた.2年目となる今年度は,主に具体的なシステムの構築と,実験を通じた有効性の検証に取り組んできた. 第一の提案手法として,心拍間隔変動を指標とするシステムの構築を行った.心拍間隔変動は,非侵襲で計測可能な自律神経活動の指標とされ,構築したシステムでは主にHF成分と呼ばれる変動成分により副交感神経活動の状態を推定し,評価値として利用した.また,このシステムでは,音楽のコード進行を最適化する対話型進化計算を行った.すなわち,うまくいった場合には,個々のユーザを安らがせる音楽のコード進行ができることになる.実験では,評価指標であるHF成分そのものは世代の更新につれて上昇しなかったものの,何世代かおきに抽出した個体に対する主観評価値はやや上昇する傾向が観察された.この手法については,現在も改良と効果の検証を引き続き行っている. 第二の提案手法として,生理指標と主観評価を併用する進化計算を提案した.これは,刺激を視聴中の生理指標を計測し,さらに刺激に対する主観評価も行う手法である.第一の手法で説明したように,生理情報から自律神経活動などを推定することは可能であるが,高次な感情活動すなわち美しさなどを生理情報から推定することは困難である.本手法は,感性的な評価と,自律神経レベルの活動の両方を指標とすることで,例えば「ユーザを安らがせる美しい楽曲」の生成を目指す.手法の有効性については,世代の更新につれてやや評価が上昇するものの,統計的に有意な有効性を示すには至っておらず,今後も検証を続ける予定である.
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