2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700284
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 慈子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (00415572)
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Keywords | 霊長類 / マーモセット / 社会学習 |
Research Abstract |
社会性はヒトが適応的に行動していく上で重要な特性であるが、その一側面である社会的認知が、オキシトシンという神経ペプチドと関わっていることがわかってきており、ヒトを対象とした研究も近年数を増やしている。しかし、まだヒトを含め霊長類でのメカニズムの理解は不十分である。本研究は、家族で群を形成し、母親だけでなく、父親、兄姉個体も子育てに参加する、小型霊長類のコモンマーモセットを対象とする。その特性を生かして、子がさまざまな知識を獲得していく過程で、家族内の個体がどのように影響を与えるかを、行動だけでなくオキシトシンを含めた内分泌学的側面も同時に調べることにより、社会的なサポートがどのような意味をもって子の学習を促進しているのかを明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は、子どもがいるコモンマーモセットの家族を対象に、子と家族のうちの1個体を対にして、新奇食物を呈示する行動実験をおこなった。まず新奇餌の準備として、被験体以外の14個体を対象に、被験体およびこれらの個体がこれまで接触したことのない食物24種類への反応を調べた。これらのうち摂食行動がみられた19種類を新奇餌実験用刺激として選択した。次にこれらの食物刺激を用いて、10週齢の子を対象に新奇餌実験を行った。実験では、飼育ケージを仕切り、一方に被験体となる子と家族の1個体(父親、母親、兄姉個体、双子の相手)を、他方にそれ以外の家族個体を分けて入れた状態にし、被験体側のケージに新奇食物を呈示した。呈示開始から5分間、ビデオカメラにより各個体の新奇食物に対する反応(接近、探索行動、摂食するまでの時間等)を記録した。その結果、父母個体とペアにされた場合には、比較的安定して新奇食物摂取が促進されたのに対し、兄姉個体および双子の相手とペアにされた時には、子の新奇食物摂取にはばらつきがあることがわかった。
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