2010 Fiscal Year Annual Research Report
衝動的行動とその制御メカニズムの解明に関する認知神経科学的研究
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21700290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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Keywords | 衝動性 / 運動制御 / 感情制御 / ドーパミン神経系遺伝子多型 / 前頭前野腹外側部 / COMT |
Research Abstract |
衝動性、感情という心理行動的現象を、脳領域間の情報伝達を担うドーパミンの機能、およびこれを調節する遺伝子の塩基配列の個人差(遺伝子多型:gene polymorphism)に着目してその制御メカニズムの詳細を解明することを目的とした。本研究においては、申請者による先行研究(若手研究(B)H18-H19)において衝動的行動の制御への関与が明らかとなった前頭前野腹外・背外側部、前頭眼窩皮質を仮説領域とし、それらの活動がドーパミンにより調整され、形成する運動・感情の制御メカニズムについて検討した。また、ドーパミンをヒト脳において直接的に操作することは極めて困難であり、その手続き上の限界を解決すべく、ドーパミンを代謝する酵素であるCOMT{Catechol-O-methyl transferase (val/met)}の遺伝子多型の機能に着目し、心理課題遂行中の脳活動をNIRS(OEG-16,スペクトラテック社製)を用いて総合的に検討した。実験の結果、COMT遺伝子多型のサブタイプの一種であり前頭前野のドーパミン濃度の高いとされるMet型保持者は、この他のサブタイプ(Valホモ接合型)と比較して快感情の制御により多くの資源を必要とすることが、前頭前野背外側部の血流量を指標とした分析により示された。従来、Met型保持者は不快刺激の知覚時の扁桃体の活性がVal型と比較して高く、そのため不快情動の制御に困難を伴うことが示唆されているが(e.g., Williams et al., 2010)、本研究においては、Met型保持者において快情動の制御不全を伴うという可能性、およびその機構が新たに示された。
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Research Products
(9 results)