2009 Fiscal Year Annual Research Report
社会的認知に関する比較発達心理学的研究-自己推進性から目標指向性まで-
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21700296
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
村井 千寿子 Tamagawa University, 脳科学研究所, 科研費研究員 (90536830)
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Keywords | 比較認知心理学 / 発達心理学 / 社会的認知 / 物理的認知 / 動きの自己推進性 / ニホンザル |
Research Abstract |
他者をはじめとした社会的対象に関する知識は,ヒトそしてヒト以外の動物にとって環境内での効率的な活動そして生存の上で重要な意味をもつ.先行研究から,ヒトが発達の初期にはすでに,人間などの生物的対象とモノなどの物理的対象を区別することが報告されている.本研究では,ヒトで高次に発達した社会的認知の原初について明らかにすべく,比較認知心理学的観点からの検討を試みた.とくに,生物的対象と物理的対象の動きの区別に焦点をあて,ヒト以外の霊長類(ニホンザル)を対象に実験を行った.課題にはヒト乳幼児研究で一般的な注視法を利用した.このような方法から,ニホンザルにおいても訓練によらない能動的に形成された対象認知を切り出すことが可能となる.具体的には,ニホンザルが生物的対象に対して外的作用なしの自己推進的な動きを期待する一方で,物理的対象に対しては外的作用による運動を期待するかどうかを調べた.この目的のため,同一の幾何学図形(長方形)が,水平運動によって直線的に移動する場合(物理的対象)とキャタピラ運動によって移動する場合(生物的対象)とを設定した.生物的対象においては接触を伴わない自己推進的運動は起こりうる正事象となるが,物理的対象においては運動原理に違反した事象となる.もし,被験体が運動原理の違反性に気付くのであれば,正事象よりも違反事象への長い注視が予想される.現時点では,ニホンザルにおけるモノ・生物的対象への異なる運動原理の理解は明示されていないが,今後より多くのデータを収集し.結果の洗練を目指す.
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