2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会的認知に関する比較発達心理学的研究‐自己推進性から目標指向性まで‐
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21700296
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
村井 千寿子 玉川大学, 脳科学研究所, 科研費研究員 (90536830)
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Keywords | 比較認知心理学 / 発達心理学 / 社会的認知 / 物理的認知 / 動きの自己推進性 / ニホンザル |
Research Abstract |
ヒトそしてヒト以外の動物にとって、他者をはじめとした社会的対象に関する理解は環境内での適応的な活動や生存の上で重要である。たとえば、ヒトは発達の早い時期から生物と物理的対象(モノ)をその運動特性において区別できる。モノが「外的作用なしには運動しない」一方で、生物的対象は「外的作用がなくても自己推進的に運動する」ことを理解しているのだ。本研究では、ヒトで高次に発達した社会的認知の原初について明らかにすべく、ヒト以外の霊長類が上記のような基礎的理解を持つかを調べた。実験には注視時間を指標とした期待違反事象課題を用いた。この課題は、被験体が起こりえる自然な事象よりも、起こりえない不自然な事象に対して長い注視を示す傾向を利用している。実験刺激には幾何学図形(長方形)がモノらしく水平に前進する動画、または、生物らしくイモムシのように伸び縮みしながら前進する動画を用いた。前者では、静止している対象が別の対象との接触によって前進する場合には自然な事象となるが、接触なしに自発的に動き出す場合には不自然な事象となる。対して、後者では、対象同士の接触がある場合・ない場合のどちらも起こり得る自然な事象となる。よって、両事象への被験体の注視は変わらないと予想される。実験の結果、生物的対象の場合には両事象に対する注視時間に違いは見られなかった。一方で、モノ的対象の場合には接触事象への長い注視が見られた。つまり、不自然な事象に比べ自然な事象をより選好した。選好の方向は逆であるものの、ニホンザルがモノ的対象については接触による運動・非接触による運動を区別している可能性、そして生物的対象とモノ的対象の運動に異なる原理を期待する可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)