2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的認知に関する比較発達心理学的研究-自己推進性から目標指向性まで-
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21700296
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
村井 千寿子 玉川大学, 脳科学研究所, 科研費研究員 (90536830)
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Keywords | 比較認知心理学 / 発達心理学 / 社会的認知 / 物理的認知 / 動きの自己推進性 / 霊長類 |
Research Abstract |
他者などの生物的・社会的対象とモノなどの物理的対象を区別し、それぞれの特性を理解することは、社会的認知の土台である。ヒトは生後数カ月の発達初期にはすでに両者を区別し、例えば、モノが外的な作用無しで自己推進的には運動しないのに対して、人間などの生物は自己推進的に動くことを理解する。 本研究では、ヒトで高次に発達した社会的認知の進化的起源について明らかにすべく、比較認知心理学的観点からの検討を試みた。とくに、生物的対象と物理的対象の動きの区別に焦点をあて、ヒト以外の霊長類がヒト乳児と同様に、物理的対象の運動には外的作用を期待し、生物的対象にはそれを期待しないかどうかを調べた。本年度は昨年度までの研究で対象としたニホンザルに加えて、チンパンジーにおける実験を遂行した。それにより、ヒト、ニホンザル、チンパンジーでの多種間での比較検討を目指した。課題にはヒト乳幼児研究で一般的な注視法を利用し、ヒト以外の霊長類においても訓練によらない能動的な対象認知の検討を試みた。実験では、被験体に対して自己推進的に運動する物体(違反事象)と外的作用によって動く物体(正事象)、同じく自己推進的、外的作用によって動く生物的対象を提示した。生物的対象の場合は自己推進的運動、外的作用による運動のどちらも起こりうる正事象となる。被験体の注視時間の分析から、ヒト以外の霊長類が、物理的対象においてはその運動に外的作用を期待している可能性が示唆された。対して、生物的対象の運動には外的作用が必然でないことを認識している可能性が示唆された。ヒトで見られる物理的、生物的・社会的対象に関する知識がヒト以外の霊長類でも共有される知識であることが考えられる。
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Research Products
(2 results)