2010 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子型、発現型の網羅的解析に基づく遺伝子制御機構の進化的シミュレーション
Project/Area Number |
21700324
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 直亮 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 特任准教授 (60395118)
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Keywords | 数理生物学 / 遺伝子発現解析 / DNAマイクロアレイ / 実験室進化 / 変異解析 |
Research Abstract |
本研究の目的である遺伝子制御ネットワークの進化過程の定量的なモデル化のため、本年度はまず、昨年度に実施した遺伝子発現解析の結果を元に、大腸菌の人工進化によって得られた6系列のエタノール適応株のそれぞれで検出されたゲノム上の突然変異について詳細な確認を行った。DNAマイクロアレイで検出された変異の箇所をSanger法によるダイレクトシーケンスによって配列を確認した所、マイクロアレイでは点変異とみなされていたものが実際には挿入配列の転移であったケースが複数見つかった。特に、多数の遺伝子の発現を制御するグローバルレギュレータと呼ばれるタイプの遺伝子の上流の領域に変異が見られた株が多かった。ただし、変異の下流にあったそれぞれの遺伝子の発現の変化は有意と言える程大きなものではなかった。 また、6系列の遺伝子発現の変化のネットワーク解析を行うとともに、発現変化のダイナミクスのシミュレーションを構築した。大腸菌の既知の発現制御因子のリストをもとに、発現制御ネットワークの中で発現が変化した遺伝子のクラスターを抽出した所、発現量の変化が連鎖している部分がいくつか見いだされた。 これらの結果を元に,発現制御ネットワーク全体のダイナミクスをモデル化したシミュレーションを構築し、実際に観測された発現量を再現するよう,進化的アルゴリズムによって相互作用のパラメータを求めた所、特定の遺伝子の相互作用だけが変化するのではなく、ネットワーク全体で多数の遺伝子の相互作用の強さが少しずつ変化する形で進化後の発現パターンに近づくという結果となった。これらの結果は、エタノールストレスといった環境への適応が、鍵となる少数の遺伝子の変異によって獲得されるというより、グローバルレギュレータといった多数の遺伝子の発現に影響を及ぼす制御因子の変異を切掛けに、細胞内の遺伝発現状態が全体としてシフトする形で獲得されているという可能性を示唆している。
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Research Products
(8 results)