2011 Fiscal Year Annual Research Report
フラグメント分子軌道計算による糖鎖結合性生体高分子の分子認識解析
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21700333
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
合田 祥子(日向寺祥子) 東海大学, 情報教育センター, 講師 (70317824)
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Keywords | フラグメント分子軌道法 / 分子認識 / 糖鎖 / 分子間相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、生体分子機能解析に対する量子化学シミュレーションへの期待や、シミュレーションの新薬開発への応用への期待などを背景とし、新薬デザインに有用な情報を取得することを目的とした、生体高分子間分子認識に関する量子化学計算に取り組んでいる。具体的には、タンパク質とそれに認識される分子間の相互作用に対する精密な計算を、フラグメント分子軌道法(FMO法)を用いて行い、各アミノ酸残基の分子認識への寄与、分子認識における微弱ながら重要な役割を果たす相互作用因子を解析している。また、これら解析に必要となる立体構造未知タンパク質のモデリングおよび認識分子との複合体構造予測も行っている。 平成23年度には、高精度モデリング手法を用いたタンパク質およびタンパク質-リガンドの複合体構造の構築を行い、さらにはその構造を元にして分子軌道計算の試算を行った。また、生体高分子の分子認識機構を探ることと計算手法の妥当性を確認するため、糖構造以外の分子を認識するタンパク質についても分子軌道計算を実施して解析を行った。 まず、糖構造を認識するタンパク質のモデリングにおいては、構造既知タンパク質のループ構造を参照する手法により、機能発現に適したタンパク質の構造を得ることができた。複合体の構造モデリングでは、構造精度を高める目的でタンパク質・リガンド双方に構造の自由度を与えたために2000以上の複合体候補構造が生成されたが、様々な検証の結果、10程度の適当な構造へと絞り込んだ。これらの構造に対して、低い精度での分子軌道計算を試みた。 さらに、構造自由度の高い糖鎖を認識する機構は複雑であるため、異なる分子をリガンドとするタンパク質についても同手法で計算を実施した。フラグメント間相互作用や静電ポテンシャルなどの詳細な解析を行うことで、分子認識に関する一定の知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度当初に予定していいた研究協力者は事情により研究参加が困難となったため、年度末に研究の繰越計画を行った。 その後は、ほぼ繰越計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「糖鎖結合性生体高分子」を対象としているが、糖鎖に結合したタンパク質の構造データの数があまり多くないこと、糖鎖結合部位の構造自由度が高いことから、その計算の実績が極めて少なく、高精度分子計算の結果に対する評価が難しい。 平成23年度の後半では、糖鎖以外の分子を認識するタンパク質の計算も評価として採用して一定の結果を得ることができた。その計算で得られた相互作用機構や相互作用エネルギーの大きさなどを参考とし、今後は糖鎖結合性タンパク質の分子認識機構の解析を行う。
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