2010 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質の層特異的回路網構築における神経活動の役割
Project/Area Number |
21700350
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 義晃 京都大学, 理学研究科, 助教 (50303813)
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Keywords | 大脳皮質 / 神経回路形成 / 神経活動 / 発達 / 脳梁 / マウス / 電気穿孔法 / GFP |
Research Abstract |
本研究は、大脳皮質の代表的な長距離軸索投射である脳梁軸索をモデルとして用いて、その層特異的軸索投射形成にどのようなパターンの神経活動が必要かを明らかにすることをめざしている。これまでに確立してきた脳梁投射細胞の神経活動を任意に操作する技術(Kir2.1チャネル、GluClチャネル、チャネルロドプシン、ハロロドプシンを用いて、発達過程の脳梁投射細胞の神経活動を抑制する技術、任意のパターンの神経活動を誘導する技術)をもとに、神経活動抑制によって軸索投射が障害された動物に、様々なパターンの神経活動を戻すことによって、どのような神経活動パターンが脳梁軸索投射の再建に有効かを明らかにする実験を行った。具体的には、子宮内電気穿孔法によってKir2.1チャネルを脳梁投射細胞に発現させ、回路形成期の神経活動を抑制すると、生後15日齢でみられる層特異的な脳梁軸索投射形成が阻害された。チャネルロドプシン・光刺激によって10Hzの神経活動を36時間(生後14-15日)人工的に誘導すると、Kir2.1による脳梁軸索の形成障害を有意に回復させることができた。10Hzの神経活動は生後1~2週の大脳皮質で優位にみられる神経活動パターンであり、軸索投射などの神経回路発達に重要な役割を担う可能性を示唆する。また、神経活動の亢進が大脳皮質神経回路の発達にどのような影響を与えるかを明らかにするため、内在性K+チャネルの発現を阻害する実験、Na+チャネルを強制発現する実験を行った。いずれの場合も、皮質神経細胞の興奮性が亢進し、その細胞移動が大きく障害されたことから、生後初期の皮質神経細胞の移動の際には、細胞興奮性が低く保たれている必要があることが示唆された。これらの結果は、発達期の大脳皮質神経細胞が正しく移動して回路を形成するためには、適度なレベル・パターンの神経活動が必要であることを示唆する。
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Research Products
(3 results)