2009 Fiscal Year Annual Research Report
PSD-Zip70によるシナプス形成・可塑性の動的制御
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21700352
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真柳 平 Osaka University, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (20432544)
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Keywords | 脳・神経 / シナプス / シグナル伝達 / スパイン / PSD |
Research Abstract |
神経細胞のシナプス後部に豊富に存在するPSD-Zip70タンパク質に注目し、シナプス形成および刺激依存的なシナプス伝達の可塑性における役割について解析を行った。我々はPSD-Zip70が興奮性刺激によって速やかにリン酸化レベルを変化させることを見出し、その分子メカニズムと生理的意義について解析を進めた。薬理学的な実験によってグルタミン酸刺激によるPSD-Zip70のリン酸化レベルの変化はNMDA受容体からのカルシウムイオンの流入によって引き起こされることをつきとめた。さらに、このリン酸化レベルの変化はPSD-Zip70の局在および相互作用タンパク質との結合性を調節しており、興奮性の刺激依存的なシナプス動態の制御に深く関わっていることが示唆された。 また、PSD-Zip70の機能をより詳細に解明するため、PSD-Zip70欠損マウスを用いた実験系を立ち上げて解析に用いた。PSD-Zip70欠損マウスの脳では大脳皮質神経細胞の樹状突起上に存在するスパインの形状に異常が観察された。大脳皮質神経細胞の初代培養系においてこのPSD-Zip70欠損によるスパインの異常は顕著であり、機能的なシナプスへの成熟が抑制されていることが認められた。現在このPSD-Zip70欠損によって生じるスパイン形態およびシナプス形成の異常に関わる分子機構についてさらに解析を進めている。PSD-Zip70の刺激依存的な動態と、遺伝子欠損による神経機能への影響を複合的に解析することによって、効率的にPSD-Zip70の役割に迫ることが可能であると考える。 神経回路網の基本単位であるシナプスの形成・成熟および可塑的変化のメカニズムを解明することは、複雑な脳の機能を理解する上で必要不可欠な重要課題である。刺激に対して動的に応答するPSD-Zip70の機能解析からこの課題に対して新たな知見を得られるものと期待している。
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Research Products
(3 results)