2010 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合蛋白質Musashi1が介するmiRNA翻訳制御
Project/Area Number |
21700358
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河原 裕憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00424177)
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Keywords | Musashil / Let-7 / Lin28 / 幹細胞 / ES細胞 |
Research Abstract |
Musashilは最初、神経系の発生過程において神経幹細胞・神経前駆細胞に顕著に発現しているRNA結合蛋白質として同定された。近年、神経系以外にも種々の組織幹細胞でも高発現していることが明らかとなってきた。しかし、種々の幹細胞が存在するES細胞から分化させたEB細胞におけるMusashilの発現解析は注目されてこなかった。そこで、マウスES細胞を用いてEB細胞段階でのMusashilの発現を調べたところ、初期神経分化が亢進される時期に一過的に高発現することが明らかとなった。前年度までの解析で、Musashilの結合蛋白質としてLin28が確認されており、Lin28はES細胞や分化直後のEB細胞では高発現しているがその発現は減少していく。Lin28はがん化を亢進する機能の他に、let-7 family microRNA (miRNA)の生合成を抑制することでES細胞から神経分化段階を調節する機能も有している。しかし、ES細胞分化段階において、let-7 miRNAはLin28が減衰する時期よりも後期から発現が観察された。一方、Musashilの一過的な発現上昇は両者(Lin28とlet-7)の発現時期を相補する形で観察された。実際、Musashil存在化でLin28依存的にlet-7生合成が抑制されることが、複数の実験から明らかにした。すなわち、Lin28高発現時期ではlet-7の発現は強く抑制されているが、急激なLin28の発現減少によるlet-7の発現上昇を、Musashilの一過性発現によるLin28依存的補助機能によりlet-7の時間的発現調節が保たれていることが示された。また、Musashilは主に細胞質に存在するがこのLin28に対するMusashilの効果は核内で起こる。そこでMusashilの核一細胞質輸送機構について調べたところ、Musashil内にNLS(核移行シグナル)が見つかり、種々の実験から核移行因子importin-α依存的な核輸送についての関係が強く示唆された。
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