2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管ニッチの有無による脳傷害誘導性神経幹細胞の移植効果の検討
Project/Area Number |
21700363
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
中込 隆之 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (80434950)
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Keywords | 神経再生 / 神経幹細胞 / 脳梗塞 / 血管ニッチ |
Research Abstract |
私たちは、脳傷害時に生体内で誘導される自己神経幹細胞の存在に着目し、その単離を試みてきた。その結果、脳梗塞後の成体マウスの大脳皮質(脳梗塞巣)より、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの三系統に分化する能力を有する内因性神経幹細胞[脳傷害(虚血)誘導性神経幹細胞;injury/ischemia-induced neural stem cell (iNSC)]を分離培養することに成功し、現在までにその特性について明らかにしてきた。 本研究では、この神経幹細胞(iNSC)を脳梗塞後のマウスに移植し、その有効性を検討した。さらに、近年、幹細胞の生着、増殖にはniche(ニッチ)の存在が重要であることが報告されてきており、血管内皮細胞[endothelial cell (EC)]が神経幹細胞のニッチとして、その生着、増殖にとって重要な役割をはたしていることが明らかとなりつつある。そこで、本研究では、神経幹細胞の移植効果のさらなる向上を目指し、iNSCの単独移植に加え、ECも同時に移植(共移植)し、移植効果の有効性を検討した。 その結果、iNSC単独投与群においては、移植後5日目、28日目に生着していた神経幹細胞は、それぞれ、7.6%,1.3%に過ぎなかった。また、移植後5日目に増殖していた神経幹細胞はわずか、0.3%であった。一方、神経幹細胞と同時に血管内皮細胞を共移植した群(iNSC/EC群)では、移植後5日目、28日目にそれぞれ、34.1%、8.3%の神経幹細胞の生着が確認でき、移植後5日目に3.9%の神経幹細胞に増殖が認められた。さらにiNSC単独投与群においては、移植後28日目に、移植した細胞の1.1%でニューロン分化を認めた。一方、iNSC/EC群では、3.4%でニューロン分化が認められ、iNSC単独投与群に比べ、神経機能回復の亢進も確認された。 以上の結果より、iNSCは脳梗塞後の細胞移植治療として応用可能であり、iNSCによる細胞移植治療における血管ニッチの有効性も本研究により示された。
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