2009 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイトから分泌されるタンパク質S100Bによる神経細胞活動調節機構の解析
Project/Area Number |
21700368
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
酒谷 誠一 The Institute of Physical and Chemical Research, 平瀬研究ユニット, 研究員 (40391958)
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Keywords | 脳・神経 / 海馬 / グリア細胞 / S100 / 蛋白質 / パッチクランプ法 / 膜電立 / シナプス伝達 |
Research Abstract |
これまでの我々の研究により、アストロサイト特異的に発現しているカルシウム結合タンパク質S100Bは、神経細胞の興奮に伴って分泌されることが明らかになった(Sakatani et al, J. Neurosci, 2008)。また、分泌されたS100Bは、その受容体である後期糖化最終産物受容体(RAGE)を介して、海馬のCA1野放線層におけるカイニン酸誘導のガンマ帯局所電場電位(ガンマ振動)の振幅を増大させ、神経の集団活動を調節していることが明らかになった。この事から、神経活動が高まると、S100Bがアストロサイトから分泌され、神経修飾物質として作用することが示唆される。しかし、S100Bが個々の神経細胞活動に与える効果は、いまだ未知のままであった。そこで、本研究では、S100Bによる神経細胞活動調節機構を明らかにするために、S100Bが神経細胞の膜電位および興奮性シナプス伝達に与える影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は、S100Bが錐体細胞の膜電位および興奮性シナプス伝達に与える影響を明らかにするために、海馬急性スライス標本において、下記の電気生理実験を行った。まずS100B投与前後で、CA1錐体細胞の静止膜電位と電流注入時の発火パターンを比較した。また、S100Bが興奮性シナプス伝達に与える影響を明らかにするために、S100B投与前後で、CA1法線層におけるfield EPSP(fEPSP)の立下りの傾きとPaired Pulse Ratioを比較した。また、S100Bがポストシナプスのグルタミン酸受容体の感受性に与える影響を明らかにするために、海馬CA1錐体細胞にホールセルパッチし、S100B投与前後で、微小興奮性シナプス電流(mEPSC)の振幅を比較した。これらの解析により、分泌タンパク質によるグリア細胞・ニューロン間における情報伝達という新たな研究展開を創出した点において意義深い。
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Research Products
(2 results)