2009 Fiscal Year Annual Research Report
二次嗅覚ニューロン特異的転写因子Tbx21の機能および嗅細胞依存的動態の解析
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21700369
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水口 留美子 The Institute of Physical and Chemical Research, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70450418)
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Keywords | 嗅覚神経回路 / 僧帽・房飾細胞 / T-box転写因子 / Tbx21 / Tbr2 |
Research Abstract |
成体マウスの嗅上皮を人工的に除去すると、嗅球僧帽・房飾細胞で転写因子Tbx21の発現が顕著に上昇する。この発現は嗅細胞からの入力または軸索投射によって制御されていると考えられた。鼻孔閉鎖により匂い刺激を除去したマウスでは、僧帽・房飾細胞のTbx21の発現に変化は見られなかった。また、CNG(cyclic nucleotide gated)チャネルに変異を持つマウス(CNGA2+/-)では一部の糸球体で神経入力が失われるが、このマウスのCNGA2陰性の糸球体の近傍でもTbx21の発現変化は認められなかった。これらの結果より、Tbx21の発現は嗅神経からの入力ではなく軸索投射に依存して制御される可能性が高いと考えられた。また、ウェスタンブロットおよびin situハイブリダイゼーションによる解析の結果、Tbx21は嗅上皮の除去後、主に転写後レベルの制御によって発現量が上昇することが明らかとなった。次に、僧帽・房飾細胞におけるTbx21の生理学的な役割について調べるために、Tbx21ノックアウトマウスの解析を行った。Tbx21ノックアウトマウスは僧帽・房飾細胞の発生や形態、遺伝子発現等に目立った異常は認められなかった。しかし嗅上皮除去後の嗅神経の嗅球への再投射に若干の遅れが生じることが分かった。このことから、Tbx21は成体で再生した嗅細胞の軸索投射に関与している可能性が示された。Tbr2は僧帽・房飾細胞でTbx21旨とよく似た発現動態を示し、血球系細胞では重複した機能を持つことが知られている。Tbx21ノックアウトマウスで顕著な表現型が見られなかったことから、Tbx21の機能をTbr2が代償している可能性が示唆された。そこで、Cre-loxPシステムを用いて僧帽・房飾細胞特異的Tbr2コンディショナルノックアウトマウスを作製した。現在このマウスを用いて、僧帽・房飾細胞におけるTbx21とTbr2の機能的重複および差異について解析を行っている。
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