2010 Fiscal Year Annual Research Report
二次嗅覚ニューロン特異的転写因子Tbx21の機能および嗅細胞依存的動態の解析
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21700369
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水口 留美子 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70450418)
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Keywords | Tbx21(T-bet) / Tbr2(Eomes) / 僧帽細胞・房飾細胞 / 嗅覚神経回路 / 神経発生 |
Research Abstract |
Tbr2はTbx21と同じ遺伝子ファミリーに属し、造血細胞で重複した機能を持つことが知られている。そこで今回、僧帽・房飾細胞におけるTbr2の機能を明らかにするために、Cre-loxPシステムを用いて僧帽・房飾細胞特異的Tbr2コンディショナルノックアウトマウスを作製し解析を行った。このマウスの僧帽・房飾細胞では、Tbx21の発現に変化は認められなかったが、同じ遺伝子ファミリーの一つであるTbr1の発現が顕著に上昇していた。またそれに伴って、小胞グルタミン酸トランスポーターのサブタイプがVGluT1からVGluT2へ変化していた。野生型マウスの房飾細胞でTbr1とTbr2は異なる細胞群で発現することから、Tbr2は通常Tbr1の発現を抑制することにより房飾細胞のサブタイプの特定化に関与している可能性が示唆された。またこのマウスでは、僧帽・房飾細胞の一次樹状突起が野生型よりも細くなり、糸球体への投射パターンが乱れていた。さらに僧帽・房飾細胞に入力する抑制性介在ニューロンの数の減少が認められた。最初期遺伝子の発現を指標として僧帽・房飾細胞の神経活性をモニターしたところ、Tbr2コンディショナルノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、同じ匂い刺激に対してより多くの僧帽・房飾細胞が活性化することが分かった。Tbr2遺伝子を欠損する僧帽・房飾細胞は樹状突起の形態に異常が生じ、抑制性介在ニューロンからの入力を正しく受けられなくなったため、僧帽・房飾細胞間の側方抑制が起こりにくくなっているのではないかと考えられた。以上の結果より、Tbr2は僧帽・房飾細胞の正常な発生と機能に重要な役割を果たすことが示された。また、機能的にも正しい匂い識別などに関与している可能性が示唆された。Tbr2コンディショナルノックアウトマウスはTbx21ノックアウトマウスと異なる表現型を示したことから、Tbx21とTbr2は僧帽・房飾細胞で少なくとも一部は異なる機能を担うと考えられた。
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Research Products
(3 results)