2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700376
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Research Institution | 財団法人東京都医学研究機構 |
Principal Investigator |
上野 耕平 (財)東京都医学総合研究所, 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (40332556)
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Keywords | ショウジョウバエ / イメージング / 学習記憶 / 可塑性 |
Research Abstract |
当該研究は学習記憶機構をより直接的に生理学的な解析を行うため、ショウジョウバエ摘出脳に対し、条件刺激もしくは無条件刺激となるような刺激を与え、脳神経細胞の可塑的な活動変化を長期的に同定することを目指すものである。昨年度までに、ショウジョウバエの匂い条件付けをmimicして、摘出脳に対し匂いと電気ショックを受容する神経部位をガラス電極によって刺激すると、その後数時間以上、匂い刺激単独による記憶中枢(キノコ体ニューロン)の神経応答性が増大する(long-term facilitation)を誘導できることを見出した。この増大は、いくつかの点において行動実験と非常に類似した結果が得られている。本年度は、さらにこのことを確認するために、ショウジョウバエの匂い嫌悪学習に非常に重要な役割を果たしていると考えられるドーパミンの効果を、この摘出脳の系で解析した。一般的に、ショウジョウバエの匂い嫌悪学習ではドーパミンは、1型ドーパミン受容体を介して、無条件刺激すなわち電気ショックの情報を記憶中枢に伝達していると考えられている。そこで、研究代表者は1型ドーパミン受容体の変異体および、同受容体に対するantagonist投与下で、上記のlong-term facilitationが見られるか否かを解析した。その結果、これら変異体やantagonist条件下においても、匂い中枢や電気ショック受容中枢の刺激によって直接引き起こされる記憶中枢の神経応答性には何ら変化が見られなかったが、long-term facilitationの形成が阻害された。また、興味深いことに、匂い中枢と電気ショック受容中枢を同時刺激すると記憶中枢は比較的高い応答性を示すが、変異体やantagonist存在下では、さらに高い応答性を示すことが明らかとなった。これは、ドーパミンが応答抑制に効果があることを示唆している。これまで行動実験では不明だったドーパミンの生理学的な効果を明らかにできたのは大きな成果である。
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Research Products
(3 results)