Research Abstract |
扁桃体皮質核が嗅覚系の支配を受けて,どのように機能しているのかを,基底外側核との神経連絡に着目し,明らかにする事を目的とした.そのために,まず,神経ネットワーク動作と神経投射様式の解析を容易にする新規単離脳実験系を完成させた.この系に,新たに開発した脳深部多点神経応答記録・解析システムを組み込み,嗅覚刺激により活性化される扁桃体ネットワークの機能構造を解析した.その結果,嗅球から扁桃体皮質への二つの神経経路のうち,梨状皮質を介した経路は第I/II層上部に投射するが,嗅内皮質を介した経路については,第I/II層下部へ投射していることが判明した.また,繰り返し入力の影響を受けてシナプス電流の流入強度が顕著に増大する領域が第II/III層にある事も新たにわかった.更に,基底外側核の神経応答のピーク潜時は,皮質核の各層で惹起された神経応答の潜時よりも遅れていることから,嗅覚刺激による神経興奮は皮質核を経由して基底外側核へ到達することが推測された.この情報の流れを解剖学的に検証する為,基底外側核への逆行性トレーサーの注入をモルモットの脳において行う為の実験プロトコルの確立も試みた.本研究のような嗅覚系における扁桃体ネットワークの機能と構造に関する知見の蓄積は,扁桃体に起因した精神疾患を,嗅覚異常により予見しようとする研究の基礎の確立という点において意義深いと考えられる.したがって,本研究で構築した単離脳実験システムは,嗅皮質の機能構造のような,in vivo系では収集の難しい知見を得る目的において,極めて重要な役割を担うものと思われる.
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