2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700404
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅生 紀之 Osaka University, 大学院・生命機能研究科, 助教 (20372625)
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Keywords | 分子・細胞神経科学 / 発生・分化 / 大脳皮質 / クロマチン / DNA修復 / ゲノム |
Research Abstract |
脳は多様な特性を持つ神経細胞からなるシステムであることが明らかになってきたが、その発生過程で神経細胞分化を制御する遺伝子発現の分子メカニズムに関しては不明な点が多い。これまでの転写因子中心の研究に加えて、次の段階として核内空間での分子の配置と動態を含めた統合的な遺伝子発現制御の研究が必要とされている。本研究では、大脳皮質形成をモデルとして神経細胞分化においてクロマチン構造制御に関与すると予測されるDNA修復酵素の役割と意義を明らかにする。さらに、染色体DNAや転写因子、クロマチン構造制御因子、DNA修復酵素の核内空間配置と動態の解析を行い、クロマチン動態による神経細胞分化の制御機構を明らかにすることを目的とした。 ノックアウトマウスにおいてアポトーシスが観察される二本鎖切断修復と塩基除去修復に着目し、免疫染色によって発生期における内在的なDNA修復酵素の核内分布を解析した。神経細胞への分化が活発な時期のマウス胚から大脳を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで浸漬固定して、冠状切断の凍結組織切片を作製後に免疫染色を行った。これまで、DNA修復酵素の組織切片での免疫染色は困難であったが、細胞固定時間を検討することでDNA修復酵素XRCC1とγH2AXの可視化に成功した。その結果、ともに脳室帯にある細胞の核内に損傷部位への集積と考えられるドット状のfociが観察された。XRCC1に関しては、過酸化水素などで損傷を与えた場合に観察されるfociの形態と異なり、大きな特徴的なfociが観察された。さらに、XRCC1のfociと共局在を示し、機能的複合体を形成すると予想される蛋白質の候補を同定することができた。この複合体は、神経細胞分化の制御関わっていることが推察され、新たな制御機構の解明に繋がるものと考えられる。
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