2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21700404
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅生 紀之 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教 (20372625)
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Keywords | 分子・細胞神経科学 / 発生・分化 / 大脳皮質 / クロマチン / DNA修復 / ゲノム |
Research Abstract |
脳は多様な特性を持つ神経細胞からなるシステムであることが明らかになってきたが、その発生過程である神経細胞分化における遺伝子発現制御に関しては不明な点が多い。これまでの転写因子に着目した研究に加えて、クロマチン構造制御因子を含めた分子の核内空間における配置と動態にまで迫る統合的な研究が必要とされている。本研究では、大脳皮質形成をモデルとしてクロマチン構造制御に関与すると予測されるDNA修復酵素の役割と意義を明らかにすることを目的とした。 ノックアウトマウスの神経細胞分化においてアポトーシスが観察される二本鎖切断修復と塩基除去修復の酵素に着目し、免疫染色によって発生期マウス大脳皮質におけるDNA修復酵素の核内分布を解析した。その結果、DNA修復酵素XRCC1と_γH2AX共に脳室帯にある神経前駆細胞の核内に損傷部位への集積と考えられるfociが数多く観察された。XRCC1に関しては、過酸化水素などで損傷を人工的に与えた場合に観察されるfociよりも大きな特徴的なfociが1細胞につき2個程度観察された。興味深いことにXRCC1のfociは、転写伸長中であるリン酸化RNA polymeraseII CTDのfociと共局在していた。さらに、大脳皮質分散培養においても同様な共局在が見られたが、RNA polymeraseII特異的な転写阻害剤α-amanitinを培養液に添加すると、リン酸化RNA polymerase II CTDと共にXRCC1のfociも減少する傾向が観察された。以上の結果から、神経前駆細胞においてDNA損傷が生じていることが明らかとなった。また、XRCC1がRNA polymerase IIと共にfociを形成し、転写と共役して機能している可能性が新たに示唆された。このことから、神経細胞の正常な分化には、神経前駆細胞の段階で転写と共役したDNA修復が機能する必要があると考えられる。
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