2010 Fiscal Year Annual Research Report
RARの活性化はトランスサイレチンを誘導しアルツハイマー病を抑制させうるか?
Project/Area Number |
21700409
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
北岡 和義 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50432753)
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Keywords | 老化 / 神経科学 / アルツハイマー病 / レチノイン酸 / トランスサイレチン |
Research Abstract |
近年ビタミンAおよび甲状腺ホルモンの輪送蛋白であるトランスサイレチン(transthyretin ; TTR)が、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβを切断・分解することにより記憶・学習能の減弱といった病態を改善させることが示唆されている。申請者はアルツハイマー病モデルマウスとしても用いられているSAMP8マウスにおいて有意なTTRのmRNA発現量の低下を確認し、さらにそれがビタミンAのの受容体であるレチノイン酸レセプター(retinoic acid receptor ; RAR)の活性化によって回復することを報告している。本研究は以上を踏まえ、RARの活性化がTTRを介してアルツハイマー病の病態を抑制させるかを検討した。 昨年度までの研究において、8カ月齢のSAMP8マウスは学習機能などの中枢神経系の老化が進んでいなかったことが示唆された。そこで本年度は13カ月齢のSAMP8マウスに対して八方向放射状迷路試験を行ったところ、有意な学習機能の減弱が認められた。それを受けて、13カ月齢SAMPR8マウスに対してRARアゴニスト添加飼料の2ヶ月間慢性投与を行い同様の試験を行うと、学習機能減弱の緩和が認められた。 そこで、その作用にTTRが関与しているかについてウェスタンブロット法、リアルタイムRT-PCR法を用いて検討を行ったが、有意な差は認められなかった。さらに検討を進めたところ、神経新生を制御するタンパク質であるADAM10の遺伝子およびタンパク発現量が13カ月齢SAMP8マウスにおいて有意に減少しており、RARアゴニスト添加飼料の摂取はそれを回復させていることが示された。 本研究の成果は認知症に対する新たな治療法としてRARの活性化が有効であること、そしてその作用メカニズムの一端を明らかにしたという点において非常に重要であると考えている。
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Research Products
(2 results)