2009 Fiscal Year Annual Research Report
低分子化合物を用いた糖尿病によるスパインの形態変性におけるカルパインの役割の解明
Project/Area Number |
21700414
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小菅 康弘 Nihon University, 薬学部, 助教 (70383726)
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Keywords | 糖尿病 / 海馬 / スパイン / カルパイン / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
本研究は、糖尿病による慢性的な高血糖が誘発する海馬機能低下のメカニズムを、海馬神経細胞のスパインの構造変化に着目して明らかにすることを目的とする。本年度はstreptozotocin(STZ)誘発糖尿病モデルマウスを用いて、スパインの構成タンパク質の変化について解析したところ、シナプス後部のマーカータンパク質の1つであるpost-synaptic density 95(PSD-95)の発現が、時間依存的に低下する傾向が認められた。そこで、PSD-95の発現調節に関与する分子の変化について解析を行ったところ、mitogen-activated protein kinase(MAPK)の1つであるextracellular-regulated kinase(ERK)のリン酸化レベルがコントロールマウスと比べ、STZ投与マウスでは顕著に低下した。また、高グルコース条件で培養したSH-SY5Y細胞においても、ERKのリン酸化レベルやPSD-95の発現レベルは時間依存的に低下した。以上の結果より、糖尿病により誘発される海馬神経障害では、高グルコース状態の持続化によるリン酸化ERKやPSD-95の発現低下が重要な役割を演じていることが示唆された。 また、本年度は、これまでにcalpainの活性抑制作用を持つことが報告されているS-allyl-L-cysteine(SAC)を基本骨格として、新たに20種類の誘導体を合成した。さらに、初代培養海馬神経細胞を用いて、これらの誘導体の持つ神経細胞保護効果について検討したところ、修飾基を組み合わせることで、SACよりも強力な神経細胞死抑制作用を持つ誘導体の合成が可能であることが明らかとなった。
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