2010 Fiscal Year Annual Research Report
低分子化合物を用いた糖尿病によるスパインの形態変性におけるカルパインの役割の解明
Project/Area Number |
21700414
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小菅 康弘 日本大学, 薬学部, 助教 (70383726)
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Keywords | 糖尿病 / 海馬 / スパイン / カルパイン / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
本研究は、糖尿病による慢性的な高血糖が誘発する海馬機能低下のメカニズムを海馬神経細胞のスパインの構造変化に着目して明らかにすることを目的とする。昨年度のSTZ誘発糖尿病モデルマウス及びSH-SY5Yを用いた実験から、慢性的な高血糖により細胞内のERKの活性化が選択的に抑制されることを見出している。そこで、本年度はSH-SY5Y細胞を用いて、高グルコース条件下においてもERKの活性化作用を持つ化合物のスクリーニングを行ったところ、17β-estradiol(E2)にERKの活性化レベルの低下を抑制する効果が認められた。次に、このE2によるERKの活性化がスパインの変性に及ぼす影響について検討を行った。その結果、高グルコース処置したSH-SY5Y細胞で認められるPSD-95(スパインの構成タンパク質の1つ)の発現減少は、E2の併用により顕著に抑制された。一方、インスリンやアルツハイマー型痴呆症の治療薬であるDonepezilには、ERKの活性化作用やPSD-95の発現低下抑制作用は認められなかった。また、カルパイン阻害薬であるCalpeptinや我々の研究グループでカルパインの活性化抑制作用を持つことを報告しているS-allyl-L-cysteine(SAC)にも、高グルコース処置によるPSD-95の発現低下を抑制する作用は認められなかった。以上の結果より、糖尿病で認められる中枢神経機能障害には、高グルコース(高血糖)状態の持続化によるERKの活性化レベルの低下が誘発するスパインの変性が重要な役割を演じていることが示唆された。
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