2010 Fiscal Year Annual Research Report
多機能遺伝子改変マウスを用いたアストロサイトの機能解析
Project/Area Number |
21700419
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
田中 謙二 生理学研究所, 分子生理研究系, 助教 (30329700)
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Keywords | Mlc1 / アストロサイト / 髄鞘 / 遺伝子改変 / 脳白質 / オリゴデンドロサイト / グリア細胞 |
Research Abstract |
アストロサイトの新たな機能を発見する一つの方法に、アストロサイト特異的疾患の病態生理解析から帰納的に機能に迫る方法がある。小児神経疾患Megalencephalic leukoencephalopathy with subcortical cysts(以下MLC)はアストロサイト特異的に発現する遺伝子MLC1の変異によって脳白質に障害が起こるので、この疾患の解析からアストロサイトがどのようにして脳白質の恒常性を維持しているか知ることが出来る。本研究では、MLCモデルマウスを樹立し、その病態生理の解析から、アストロサイトがどのようにして脳白質の恒常性を維持するのか明らかにすることを目的とした。 Mlc1ノックアウトでは脳白質の組織学的な変化は認められなかった。一方で、Mlc1過剰発現マウスでは、脳白質である脳梁や髄鞘化軸索に富む淡蒼球に空胞が多数見られた。電子顕微鏡観察によって、これらの空胞のうち半分はアストロサイトの膨化によるもので、残りの半分は髄鞘化軸索のミエリンと軸索間に生じた空胞であることが分かった。以上の組織学的変化はヒトMLCで報告されている病理と酷似することから、ヒトMLCはMlc1遺伝子の機能喪失ではなく機能亢進によって起こることが示唆された。 副次的な結果として、Mlc1過剰発現マウスにおける小脳細胞構築異常を発見した。小脳のMlc1発現細胞はバーグマングリアであることから、小脳発達期のバーグマングリアにおけるなんらかの異常が小脳構築異常を引き起こしていると考えられる。バーグマングリアがどのようにして整然とした神経細胞の配置に関与するのか調べる良いモデルが出来た。
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