2010 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚同時検出におけるフィードフォワード抑制機構の役割
Project/Area Number |
21700431
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 玲 京都大学, 医学研究科, 助教 (70422970)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 同時検出 / 聴覚 / 音源定位 |
Research Abstract |
本研究では鳥類の脳幹に存在し、左右の音入力の同時検出器として働くことで音源定位に関わる層状核(NL)神経細胞を対象に、その同時検出精度にフィードフォワード抑制がどのように関わるのか、in vitro研究を中心に細胞レベルで明らかにすることを目的とする。音源定位機構におけるフィードフォワード抑制回路の存在は哺乳類においてよく知られているが、鳥類においては不明であった。前年度においてNL細胞からホールセル記録を行い、蝸牛神経核からの興奮性投射線維を電気刺激した時に観察されるシナプス入力を解析することで、NLに投射する新たなフィードフォワード抑制回路の存在を明らかにした。このIPSCはEPSCに数ミリ秒遅れて入力し、薬理学的に興奮性シナプス伝達を阻害すると消失する多シナプス性の現象である。さらにこのIPSCは、NLへの抑制の主な起源である上オリーブ核を切り取ったスライス標本でも観察されることから、NL近傍に存在するGABA作動性の介在神経細胞によると考えられる。面白いことに上記のような現象は低い周波数領域の細胞でのみ観察された。さらにin situハイブリダイゼーション法を用いた解析から、介在神経細胞がNLの低い周波数領域の周辺に集中して存在することも明らかとなった。さらにこのIPSCの時間経過等の詳細な性質を明らかした上で、コンピューターシミュレーションを活用し、フィードフォワード抑制機構の役割をその周波数依存性も含めて検討した。その結果、鳥類NLの低い周波数領域の細胞では、時間依存的なフィードフォワード抑制と上オリーブ核からの持続的なフィードバック抑制が相補的に働くことで、様々な強さの音入力に対して安定して高い同時検出精度を実現していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)