2010 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光タンパクセンサーを発現する遺伝子改変マウスを用いた匂い情報処理機構の解明
Project/Area Number |
21700441
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
武藤 弘樹 独立行政法人理化学研究所, 神経回路ダイナミクス研究チーム, 研究員 (60443040)
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Keywords | 嗅脳 / 膜電位センサー / 脳機能光学測定 / 遺伝子改変マウス / in vivo / 匂いの記憶・学習 |
Research Abstract |
本研究は、蛍光タンパクセンサーを特定の神経細胞に発現させた遺伝子改変マウスを用い、匂いの記憶・学習がどのように情報処理されているのかを解明することにある。 昨年度、生体脳における膜電位センサー(VSFP)の機能確認を行うため2つのアプローチを平行して行った。1つは、Cre/loxPシステムを用いて僧帽細胞にVSFPが発現する遺伝子改変マウスの作製である。CreをプロモーターPcdh21によって僧帽細胞に発現させた遺伝子改変マウスを他の研究室より頂き、また逆向きに配列させたloxPの間に反転させたVSFP2.3の配列を持つ遺伝子改変マウスを我々の研究室で作製し、それらの遺伝子改変マウスを交配することでVSFP2.3が僧帽細胞に発現する遺伝子改変マウスの作製を行った。現在、VSFP2.3の蛍光を持つ遺伝子改変マウス系統がいくつか確認され、発現パターンと機能確認を行っている。 もう1つのアプローチは、胎仔期エレクトロポレーションによってVSFPを大脳皮質に発現させ、生体脳での機能確認を行うものである。遺伝子改変マウスの作製と系統の確立には莫大な時間が必要となるため、作製した遺伝子改変マウスによる機能確認はリスクが大きく非効率的である。胎仔期エレクトロポレーションによってVSFPを発現させたマウスは、実験ごとにマウスを用意しなければならないが、新たに改良または開発されたセンサーの生体脳での機能確認または実用性の評価には適している。実際、VSFP2.3を大脳皮質錐体細胞にエレクトロポレーションしたマウスにより、1本のヒゲを一度だけわずかに動かしたときの神経細胞集団の膜電位変化を観察することができ、体性感覚野の投射性地図も確認された。このことより、VSFP2.3が生体脳で機能し、外部からの感覚入力による神経活動を観察するのに十分な精度を持つことが実証された。 本研究で得られる成果は、嗅脳での情報処理過程の解明を導くだけでなく、新たな蛍光タンパクセンサーの開発または様々な脳部位での研究に役立つと期待される。
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