2010 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋細胞外分子欠損症における、組織標的シグナルを利用した汎用治療法の開発研究
Project/Area Number |
21700443
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 美佳子 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (60444402)
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Keywords | 先天性筋無力症 / 遺伝子治療 / collagen Q / アセチルコリンエステラーゼ欠損症 / 分子欠損症 |
Research Abstract |
先天性筋(AChE)無力症候群の1つであるCollagen Q(ColQ)変異による終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症に対するタンパク係留療法の開発を試みた。 COLQを組み込んだアデノ随伴ウィルス(AAV)をColq-/-マウスの尾静脈より全身投与(~2x10^<12>genome copies)4週間後には、ロタロッドによる運動テストで正常マウスと同成績まで回復した。治療マウスの骨格筋の組織切片では、AChR部位に、AChE活性とColQ抗体によるシグナルが検出され、神経筋接合部においてAChE-ColQ複合体が正常の89%まで上昇していた。 全身投与マウスで治療効果が高かったのは、COLQ遺伝子導入された細胞の割合が低くても,ColQ自らの細胞外集積により、神経筋接合部において十分量を獲得できたためと考えられる。それを実証するために、局部感染に適したAAV senotype1を用いた。Colq-/-マウスの右肢前頸骨筋にAAV1-COLQ-IRES GFPを筋肉注射し、発現したColQの全身筋組織への移動を検証した。その結果、非注入部位においてAChEとColQの集積が観察され、AChE活性は正常の23%に上昇していた。一方GFP発現は、注入部位のみで観察されたが、非注入部位では発現が見られなかった。これは、ColQが細部外分子であるため、遺伝子導入された細胞組織以外に、体液を介して他部の組織シナプス基底膜に係留したと考えられる。 さらにタンパク自身が移動する証明をするため、HEKにtransfectionして抽出したAChE-ColQ複合体タンパクを粗精製し、マウスの臀筋に注入した。四肢の骨格筋において神経筋接合部でのColQ蓄積とAChE活性が認められ、マウスの筋力もわずかではあるが上昇した。 本研究により、protein-anchoring strategyは、細胞外マトリクス分子を補充する療法として有効であり、他の分子欠損症に対しても応用が期待できる。
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