2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトとマウスの種間差を補うウサギ幹細胞システムの確立
Project/Area Number |
21700453
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本多 新 The Institute of Physical and Chemical Research, 遺伝工学基盤技術室, 客員研究員 (10373367)
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Keywords | ウサギ / ES細胞 / 核移植クローン / 再生医療 |
Research Abstract |
本研究はヒトのES細胞に非常によく似た特質を示すウサギのES細胞を利用して、ヒト医療の安全性評価などに役立てるための研究である。ウサギを利用してヒト医療の安全性試験を展開する上で、ウサギであることを最大限に利用するシステムを構築する必要がある。ウサギは古くから眼科の前臨床試験などに用いられてきた歴史があり、近年、マウス、サル、ヒトのES細胞から網膜色素上皮細胞や視細胞の体外分化誘導系が確立されつつある。現在このシステムによる網膜性疾患の治療が期待されている。そこで我々はウサギのES細胞から網膜色素上皮細胞や視細胞を体外で分化誘導し、移植することでその定着率や移植効果を判断する研究を開始する。これまで我々が樹立してきたES細胞は、日本白色種ウサギ由来のES細胞である。日本白色種ウサギは網膜に色素沈着が無く赤目である。ES細胞の体外での網膜色素上皮細胞への分化誘導は、その指標が色素の沈着であるため、色素の生じない日本白色種ウサギ由来のES細胞は網膜色素上皮細胞の分化誘導系に供することは適切ではない。そこで、黒目をしたDutch種のウサギからES細胞株を樹立することを試みた。様々な試行錯誤の末に、ようやく複数ラインのDutch種由来ES細胞の樹立に成功した。今後はこのES細胞を用いて、体外での網膜色素上皮細胞や視細胞への分化誘導を行う予定である。また、最近では網膜色素上皮変性モデルウサギが実際に販売されている。我々は核移植クローンウサギ胚を調製することが可能であるため、このモデルウサギから核移植クローン技術を利用してES細胞を樹立し、遺伝子治療を施した後に、体外で網膜色素上皮細胞や視細胞に分化させ、供与個体に戻し移植することも考えている。この系を用いれば、拒絶のない移植と治療へ向けて大きな前進になり、iPS細胞を用いた医療の安全性試験において、大きく重要な知見を与えうる成果を導く可能性がある。
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